10月 19日(月)天高く…
ご機嫌よろしゅうございます。
秋は食欲の秋、読書の秋と言われるように
気候が穏やかで、なにをするにも
気持ち良く過ごせますね。
そんなお天気がよい日が続く、過ごしやすい
秋の季節に使われる言葉に
天高く馬肥ゆる秋
という言葉があります。
気候が穏やかで食欲も湧いてくる
馬もよく草を食み、大きく成長する…
という意味で使われていることが
多いかもしれません。
緑の広がる草原で馬がのんびりとして過ごす
のどかな風景を思い描けそうですが、
実はこの言葉、中国において
「秋になると馬が育って騎馬民族が
攻め入ってくるから用心する時季であり警戒せよ」
というのが本来の意味なのだそうです。
12月 30日 大津馬(おおつうま)
ご機嫌よろしゅうございます。
宗家の除夜釜では例年、
寄付の床に飾られる掛物があります。
何ゆゑかおもに
おほ津のうまれきて
なれもうき世か我もうきよに
という歌とともに描かれた大津馬。
大津馬とは大津の宿駅で、荷物の運送に使われていた
馬の事をいいます。
12月11日にご紹介した沢庵和尚が配流の前に、
江戸に呼ばれて東下りする途中に
詠んだ和歌といわれており、
その歌意を汲んで、松花堂昭乗が「大津馬」
を描いたとされる絵が、
根津美術館に残っています。
この寄付に掛けられる大津馬はその絵の
宗中公の写しです。
この馬を眺めていると
一年の時の流れと人の一生、
そんなことをふと考えてしまうような気がします。
今年の干支は午(うま)でした。
皆様の今年一年はどんな年でしたでしょうか?
明日はいよいよ大晦日です。
12月13日 心の駒(こま)
ご機嫌よろしゅうございます。
今年も残すところあと数日となりました。
茶の湯では年の初めに用いた干支のお道具を
この年末に再び使って、
一年を振り返りつつお茶をいただきます。
宗家の稽古場では、家元が今年好まれた
「手綱・七宝文」の茶碗が再び使われていました。
遠州公自詠の和歌に
よしやただ 心の駒は あれぬとも
ついにのりしる 道を尋ねむ
という歌があります。
駒というのは馬のことで
どんな荒馬であっても、その御し方次第で
最後にはその荒馬も乗りこなすことができる
ということから、
激しい変化に翻弄される日々の中にあっても
己の心を正しく持ち、荒馬のごとく
乗りこなすことができれば、仏の世界を知り
立派な人間となることができる
ということを表した歌です。
遠州公の時代から400年以上経った今
世の中は便利なものに溢れ、豊かになりました。
しかし、私たちの心はどうでしょう?
どのような状況にあろうとも、
己の荒馬を乗りこなし、
自在に操れるようにありたいものです。