12月 23日(水)遠州流茶道の点法
「薄茶・後礼(こうれい)」
ご機嫌よろしゅうございます。
先週は濃茶までお話しました。
今日はお茶事の最後、薄茶についてお話します。
濃茶をいただいた後は席を広間に移して
薄茶をいただきます。
歳暮に広間にうつらず、小間のまま続き薄をすることも
ありますが、通常は遠州流茶道では場所を変えることで、
それまでの雰囲気をガラッと変え、広間では
和やかで気楽な空気を楽しみます。
遠州公は濃茶の後に鎖の間を通って広間に移動し、
精神性を重んじた茶から草創期の書院の茶、
更に古典的な王朝文化を感じられる茶へと、
さながら茶の湯の時代絵巻のように楽しむ空間を
創り上げました。
広間の席に移りましたら、これまでの労を労い、
ご亭主にも薄茶をおすすめして皆で楽しみます。
水菓子などもいただき、芳名帳などがあればここで
記入し、全体で約4時間程度のお茶事もこれで終了です。
お茶事の翌日に再び亭主宅を訪問し
客は後礼といって
茶事のお礼をします。
亭主に感謝の意を伝えましよう。
12月 16日(水)遠州流茶道の点法
「中立・濃茶」
ご機嫌よろしゅうございます。
炭点法・会席が終わると一度席を改める
中立ちです。
この間に辺りが暗くなっていれば石灯籠に
灯りが燈ります。裏方はこの石灯籠の中に
火をいれ、障子紙を水貼りします。
白い紙の奥にうつる柔らかい光は、暗がりの
露地の景色をより一層美しく引き立ててくれます。
銅鑼の音が聞こえたらいよいよ席入りです。
濃茶では、客は静かにお茶が点つのを待ちます。
通常の稽古ではお菓子をいただいてお茶を飲みますが、
本来は会席の最後にお菓子をいただき、
中立ちで口も清めるので、濃茶の席では
お茶本来の甘み・苦味をじっくり味わいます。
2月 4日(水) 濃茶
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は濃茶点法についてのお話を
茶道には薄茶・濃茶とあり、一般的に現在は
抹茶といわれてだされるものは薄茶が多いですが
本来抹茶といえば、この濃茶を点てるのが
正式な姿で、茶の湯が出来た頃には、お茶といえばむしろ
この濃茶のみ
であったと思われます。
点法で「お茶を一服差し上げます」
という挨拶はこの濃茶を指すわけです。
薄茶の時とは異なり、一服のお茶が点つまでに
主客共に精神を張り詰めて、一挙手一投足に
集中し、釜の煮え音、茶を練る音、柄杓から湯の落ちる音
までもご馳走に楽しみます。
遠州流の濃茶でのお点法では、
お茶の香りが飛ぶのを避けるため
お茶を点てている途中で、お湯をくわえないこと
(2014年 11月 26日 参照)
茶入の巣蓋は景色として、お客様に見えるように
置くことが特徴的です。
また中水の後にはそれまで窓に掛けていた簾を
茶室外から、一気に巻き上げます。
明るい日差しが入ることにより、室内がパッとあかるくなり、
一服の茶に
集中していた緊張感が溶け、 開放感が生まれます。
1月 21日 (水)薄茶(うすちゃ)
ご機嫌よろしゅうございます。
茶道に入門して最初に習うのは
お点法の基本となる薄茶です。
そして稽古が進むにつれ、濃茶や
難しい点法を習うようになり、
茶道を習い始めてしばらくすると、
初めに習った薄茶の点法に慣れ、
自分のくせが往々にして現れることがあります。
点法とは薄茶にありときくものを
粗相(そそう)におもう 人はあやまり
という言葉があります。
茶道の正式な形であるお茶事では
寄付(よりつき)→迎付(むかえつけ)→初入→
初炭→会席→中立→濃茶→後炭→薄茶
という流れの中、主客共に緊張感を
持って時が流れます。
全ての流れを終えるまでに約4時間。
その最後に当たる薄茶では、それまでの緊張も
溶け、リラックスした雰囲気の中で
薄茶をいただきます。
その日の話題も弾み、亭主はお客様とお話を
しながら薄茶を点てることになります。
お話ばかりに夢中になり、手元がおろそかになることや、
点法に夢中になっていてはお客様との話も
弾まない。
如何なる状況でも平常心で点法ができる
それが薄茶に必要な心といえるでしょう。
4月25日 前押(まえおせ)
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は遠州公の好みの形である前押について
お話ししたいと思います。
茶碗や水指などの道具に見られる意匠です。
正面に手で押したわずかなへこみを作り
アクセントとしています。ここが正面ですよと
お客様にわかっていただけるように
との心配りからついています。
遠州流では濃茶の後、数名のお客様に次々と
薄茶を点てる場合に重ね茶碗というものを使用します。
同じ出生(窯)のもので、天目型の成りに
正面をわずかにへこませた前押の形
のものを大小重ねて使用する茶碗です。
遠州公は当初三島茶碗などの平茶碗をお客様の人数分重ねて
点法したようですが、
それを国焼きに改めて考案しました。
切形(きりがた)と呼ばれる型紙をもとに
遠州公の作為による前押茶碗を、八世宗中公が作らせた
高取の重ね茶碗も今に伝わっています。
この重茶碗というお点法は、
遠州流特有のお点法です。
1月15日 好みの茶碗
ご機嫌よろしゅうございます。
本日は東京における点初め最終日です。
お腹も満たされ、いよいよ最後は薄茶へ。
毎年お家元が好まれお作りになられた茶碗が薄茶席で使われます。
薄茶席では例年、主茶碗の他、ご先代の代から好まれた(デザインされた)干支の茶碗が使われています。
「こちらが12年前、24年前、36年前の干支のお茶碗で…」
と浅井先生から説明を受けると
皆様それぞれに茶碗を手どって
楽しそうにお話をはずませていらっしゃいます。
今年の茶碗は
色絵 手綱・七宝つなぎ文様 矢口永寿作
です。
口つくりは仁清の様にやわらかく山路風に作られ
干支にちなみ、胴の上の部分には色絵で馬の手綱が描かれ下部には、遠州流らしい七宝紋をめぐらせたデザインです。
馬を描いた道具はしばしば目にしますが、馬を連想させるモチーフが描かれたものは
なかなかありませんので、印象的です。
薄茶席にて是非手取りましてご覧ください。
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