4月 6日 (月) 青柳(あおやぎ)

2015-4-6 UP

4月 6日 (月) 青柳(あおやぎ)

青柳の 糸よりかくる
春しもぞ 乱れて花の ほころびにける

ご機嫌よろしゅうございます。

桜の美しい姿を愛で、春の季節を満喫する
頃ですが、同時に青々とした柳の揺れる様を
眺めるのも楽しいものです。

この和歌は
古今集 春上 紀貫之(きのつらゆき)
の和歌です。

青柳が糸を縒(よ)り合わせたように
風になびいているこの春に、
一方では桜の花が咲き乱れていたことよ。

柳と桜は共に都の春を彩る代表的なもので
風になびく青柳の細枝と、咲き乱れる桜の花の
緑と紅の色の対比が、都の春の風景を色彩豊かに
とらえた和歌です。

禅語にも「柳緑花紅(やなぎはみどりはなはくれない)」
という言葉があります。

瀬戸間中古窯に遠州公が「青柳」と銘命した
茶入があります。
釉薬の流れがまさしく青柳の細い枝のような景の
茶入です。

鐘聲(かねのこえ)

2014-12-27 UP


12月 27日 鐘聲(かねのこえ)

ご機嫌よろしゅうございます。

今日は遠州蔵帳所載の茶入ではなく
先々代から当代のお家元まで、
大晦日の除夜釜で使用している
「鐘聲(かねのこえ)」という銘の茶入を
ご紹介します。

大正12年震災により、稽古中水屋に置いてあった
一つの茶入が割れてしまいました。
当時は稽古道具というものはなく、お弟子さんが
お稽古をする際にも小堀家に伝わる、歴史ある
道具が使われていました。

その茶入も利休が好んだとされる利休瀬戸。
それが見事に割れてしまったのです。

先々代の宗明宗匠は、その茶入の破片を丁寧に
つなぎ合わせ、歌銘を添えました。

百八の煩悩くだく鐘の音に
鬼もすみかにたちかへるらむ

壊れたことで、逆に道具に新しい命が吹き込まれ
以後、除夜の鐘が打たれる年の瀬に、
この茶入が用いられるようになりました

遠州公と高取焼

2014-11-16 UP

11月 16日 遠州公と高取焼

ご機嫌よろしゅうございます。
今日は先週に引き続き、
遠州公と高取焼についてのお話を
ご紹介します。

高取焼の茶入で有名なものの一つに
「横嶽」という銘の茶入があります。

御所持の茶入 一段見事に御座候
染川 秋の夜 いづれもこれには劣り申すべく候…
前廉の二つの御茶入は御割りすてなさるべく候…
(「伏見屋筆記 名物茶器図」)

黒田忠之公が遠州公に茶入を見せて、
命銘をお願いしました。
遠州公はこの茶入のでき上がりを賞讃し、
先週ご紹介した、二つの茶入「秋の夜」「染川」
よりも優れているとして、前の二つは割捨ててしまいなさい
とまで言っています。

そして九州の名勝横嶽にちなんで銘をつけました。

過去火災に遭い、付属物を消失し釉薬の色も多少変わって
しまいましたが、形はそのままに
現在熱海のMOA美術館に収蔵されています。