2月1日(月) 向栄亭の床の間拝見
ご機嫌よろしゅうございます。
今日から二月、そして二月の四日は 立春です。
寒さは依然として厳しいですが そろそろ春の気配を感じられる頃になりました。
さて、今日は二月の宗家稽古場の床の間をご紹介します。
床 紅心宗慶宗匠筆 柳緑花紅(やなぎはみどり はなはくれない)
花 加茂本阿弥椿 木五倍子(かもほんなみつばき きぶし)
花入 志戸呂 鶴首
床の間の掛け物の言葉は 中国北宋時代の政治家であり詩人である
蘇東坡(そとうば)の「花紅柳緑真面目」 花は紅(くれない)柳は緑(みどり) 真面目(しんめんもく)
という言葉に由来するものです。
花は紅、柳は緑、このあたりまえのことが、
とりもなおさず真理の実相である
自然のあらゆるものがそのままで 真実を具現しているといっています
6月 3日 (水)遠州流茶道の点法
「香所望」
ご機嫌よろしゅうございます。
梅雨の時期、湿気が多くなり過ごしにくく
感じる一方、お香を聞くにはとても
よい環境となります。
今日は通常のお点法の話から離れて
お香についてお話ししたいとおもいます。
最近ではあまり行われることはないようですが
お茶事の際には花所望、炭所望など
お客様に所望をすることがありました。
そのうちの一つに香所望があります。
お香は炭の匂いを消したり、
空気を清浄にするという意味もあり、
炭点法の最中に火中にくべられます。
また香炉を飾る場合もあります。
茶室に入った際、棚に聞き香炉が飾ってあった場合、
お客様は香炉を拝見し、それから香の所望をします。
亭主は自分の香を焚き、その後お客様にも
香を所望するのです。
ですから、本来お茶に招かれた際
所望に応えられるよう、
自分の香を香包みにいれておくのが
茶人の心得でした。
5月 18日 (月) 都忘れ
ご機嫌よろしゅうございます。
五月になり、草木も穏やかな季節に
可愛らしい花を次々と咲かせてくれます。
茶の湯の花も風炉の季節には椿から草花へ
その主役をうつします。
春から初夏にかけて、濃紫・紅・白色の小さな花を
咲かせる「都忘れ」も、風炉の季節を彩る茶花の一つです。
キク科の可愛らしい小さな花で
江戸時代から茶花、庭の下草として栽培され、
様々な園芸品種が作られてきました。
しかしこの「都忘れ」
なんだか切ない名前に感じられませんか?
この名は、承久の乱後、佐渡に流された
順徳天皇(1197~1242)が、この花を見て、
いかにして 契りおきけん 白菊を
都忘れと 名付くるも憂し
と詠んだことに由来すると言われています。
小さな菊を御所の周辺に植え、愛でていた順徳天皇。
特に父・後鳥羽上皇が白菊を好んだといわれ、
配流の島で、父帝が愛した白菊に似た花を「都忘れ」
と名付けて愛着することを、いかなる因果の巡り合わせ
であろうと嘆いています。
実際天皇がご覧になったのは、今日私たちが呼ぶ「都忘れ」
とは、実は異なった花だとも言われていますが
よく似た小さく可憐な花であったようです。
在島二十一年、歌道と仏道の中に歳月を過ごし
四十六歳の若さでお亡くなりになります。
都を想う順徳天皇のお心がこの小さな花に込められています。
5月23日 遠州公時代の三河の名所
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は伊勢物語に出てきた三河の八つ橋について
遠州公が歌った和歌をご紹介します。
遠州公が元和七年(1622)43歳のときに
江戸から京都へ上った際の日記があります。
八つ橋というところに着いた。
燕子花の名所ということなので
さぞかしたくさん咲いているのだろうと思って
いたけれども、全く咲いていなかった。
やつはしに はるばるときてみかはなる
花には事をかきつばたかな
と言ったらお供のものが大変おもしろがった
とかかれています。
「花に事欠く」と「かきつばた」をかけたのですね。
平安時代、燕子花の名所であった三河は
遠州公の時代には名所がどこであったか
その場所もわからなくなっていたようです。
5月20日 あやめとかきつばた
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は「燕子花」の花のお話を。
いづれあやめかかきつばた
物の区別がつかないことの例えとして用いられる
言葉の通り、一見すると
「あやめ」と「かきつばた」の見分けは難しいですね。
葉の形で言えば
葉の幅がやや広いのが「かきつばた」
花を見れば
花の中側に黄色と紫の虎斑模様があるのが「あやめ」
で「かきつばた」にはそれがなく、黄色だけ
というところで見分けがつきます。
宗実御家元は五月になると好んで用いています。
映画「父は家元」の花を入れるシーンは記憶に新しいところです。
5月12日 卯の花墻
ご機嫌よろしゅうございます。
爽やかな初夏に白い卯の花が美しく咲き
新緑にうつるその白さは、私たちの目に眩しく映ります。
卯の花は空木(うつぎ)の別名です。
今日はそんな卯の花を銘にもつ
茶碗をご紹介します。
日本で焼かれた茶碗で国宝に指定されているのは、
二碗のみで、そのうちの一つがこの「卯の花墻」です。
(もう一碗は本阿弥光悦作・銘「不二山」
室町三井家から寄贈され、現在東京の三井記念美術館に
所蔵されています。
16世紀後半、桃山時代に作られた志野茶碗です。
志野とは、美濃(現在の岐阜県)の窯で焼かれ
桃山時代を代表する窯場のひとつで、
織部焼もここで作られています。
少し歪んだなりをしていて、篦削りも大胆なこの茶碗は
織部好みに通じる作行きです。
夏に白い花を咲かせる卯の花の垣根に
似ていることからこの銘がつけられました。
遠州公の後、徳川将軍の茶道師範となった
片桐石州による銘とされています。
2月13日 「雪の日には紅梅一輪」
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は梅にちなんだお話をご紹介します。
遠州の「綺麗さび」と利休の「侘び」
この違いをよく表すエピソードがあります。
ある雪の日、利休がお茶室にお客様を招きますが
その席の床の間には
掛物も花も何も飾ってありませんでした。
利休は
「雪も花である。 雪の日に花は要らぬ」
と話しました。
一方、遠州は
「雪の日には紅梅一輪」
と言っています。
利休の求めるのは
自然の中に見出す厳しさも含んだ美しさ
それと対照的に
雪の路地を抜け、席中に入ってうつる紅梅の色に
ほっと温もりを感じてほしいという
遠州の美意識
それぞれの生きた時代が
その精神性に反映されて生まれた
美しさです。
【告知】
映画 父は家元 上映案内
・テアトル新宿 21日まで
・横浜ニューテアトル 14日まで
・福岡中州大洋 21日まで
・金沢シネモンド 3月8日~21日
・名古屋 伏見ミリオン 4月5日~18日
・青森 シネマ・ディクト 4月19日~5月2日
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