1月9日 (金)平成27年度 遠州茶道宗家 稽古照今
点初め(たてぞめ)
ご機嫌よろしゅうございます。
いよいよお茶の新年の行事
点初めが始まります。
例年大勢のお客様、門人で賑わうこの点初め
一服の茶と共に、同座する皆様と
その心を通わせる
皆様に新しい年を迎えた喜びを感じていただ
けるよう宗家及び門人一同精一杯のおもてなしで
皆様をお迎えしています。
さて、お家元に点初めに向けて一言頂きました。
「昨年は映画『父は家元』を皮切りに、
茶道テディベアなど、様々な分野との交流を持ち
遠州流茶道の幅を広げてきました。
今年はそれに満足せず、更に新しい事に
挑戦する姿勢を持ちたいと思います。
その心構えを点初めの掛け物で表したいと
思っています。
その一方御題の「本」に基づき、
茶の湯本来の源を探究してゆきたいと思っております。」
点初めにお越しになる皆様
是非お家元のお話に注目して新年初の
お茶をお楽しみ下さい。【
6月3日 水無月(みなづき)
ご機嫌よろしゅうございます。
6月に入ると和菓子屋さんで
三角形の小豆を散らしたお菓子
を目にしたことはありませんか?
これは水無月というお菓子で、
外郎(ういろう)で氷をかたどったものです。
昔、宮中では氷室(ひむろ)といわれる洞窟のような場所に
氷や雪を冬のうちに保管していました。
ここから氷を取り寄せ、氷を口にして、暑気払いをしていましたが
高級品である氷は、とても庶民の口に入りません。
そのため、麦粉を練り、氷片に見立てて食べたのが「水無月」です。
水無月の三角形は氷室の氷片を表したもので、
上の小豆は氷の中にある泡を表し、
また悪魔払いの意味をもつと言われています。
夏の酷暑を乗り切り、無病息災を祈願するお菓子です。
京都ではこのお菓子を6月30日の「夏越の祓え」でいただく
のが習慣なのだそうです。
5月31日 遠州公の愛した茶入
「埜中(のなか)」
ご機嫌よろしゅうございます。
本日は遠州蔵帳所載の茶入「埜中」を
御紹介します。
中国から渡ってきた茶入で
おもはくは埜中にとては
植えおかじ 昔は人の軒のたちばな
慈鎮和尚
の歌意にちなんだものと思われます。
遠州公の茶会記には特に記載が残っていません。
松花堂昭乗との関係があるようで
挽家の「埜中」の字は松花堂昭乗によるもので、
茶入に添えられているお盆の箱書も松花堂昭乗の筆です。
さらに「遠州松花堂贈答の文」の一軸が添えられています。
5月 27日 目に青葉 山ほととぎす 初鰹(はつがつお)
目に青葉
山ほととぎす
初鰹
ご機嫌よろしゅうございます。
江戸時代の俳人・山口素堂の
季節感をよく表した句ですが
正しくは「目には青葉…」なのだそうです。
初夏はのぼり鰹(かつお)のシーズン。
南の暖かい海で冬を過ごした鰹が、4~5月にかけて
黒潮に乗り太平洋沿岸を北上します。
「女房を質に入れても」といわれた初鰹ですが
鎌倉で水揚げされた「相州の初鰹」は特に珍重され、
江戸まで早舟で届けたといわれます。
文化九年(1812)には魚河岸に入った17本の鰹のうち、
6本が将軍家へ献上されました。
そして残りを高級料理屋の八百膳と魚屋が
そのうち一本を三代目中村歌右衛門が3両で買い
大部屋の役者に振舞ったという記録が残っており、
こぞって法外な高値で取引される
初鰹は庶民の話題の的となりました。
1両が現在の30万円ぐらい
これは当時の最下級の武士の一年分ほどの給料に
相当するようです。
5月1日 初風炉(しょぶろ)
ご機嫌よろしゅうございます。
茶道ではいよいよ季節が夏へかわり 茶室の設えも、爽やかな季節に向けて 準備します。
寒い冬には、お客様に近い炉(ろ)を使って暖をとり 大きな釜で湯を沸かしました。 5月に入り暖かい季節になると、なるべく火の気をお客様から 遠ざけるため冬の間使用した炉に蓋をして 風炉を壁付きの方へ置きます。
この風炉の中にも小さな宇宙が広がります。 初夏・盛夏・晩秋にそれぞれ真・行・草と呼ばれる灰型に 形を変えて5月から10月に渡る季節の移り変わりを表現します。
「父は家元」の映画の中で 安藤執事長が灰型を作るシーンがありました。 丹精こめて手入れした灰は決して押さえずに、 その一粒一粒を やはり自分で作った灰箒で丁寧になでて仕上げていきます。 灰が自分の思い通りに動かせるようになるまでには 長い年月を要します。
遠州流の灰は湿し灰(しめしばい)とよばれるもので 使うたびに湿らせて振るいにかけ、湿り具合を調整して保管しています。 ご宗家の灰は、遠州公の時代から繰り返し使われ、 手入れされてきた歴史ある灰で 振るう者にも、一粒とて無駄にせぬようにと 振るい方と共に教えられてきました。 直門のお稽古ではその遠州公以来の灰でお稽古しており なんとも身が引き締まります。
遠州公の時代には26通りの型があったそうです。
4月11日 耳付(みみつき)
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は遠州公のお好みになられた形の一つ
「耳付」をご紹介します。
遠州公以前にも見られた意匠ですが、
遠州公は上の方に小さなアクセントのように
耳をつけた瀟洒な形を好みました。
茶入の小さな耳、笹葉をした耳、遠州茶道宗家の紋である七宝形、
弦(つる)耳、
花入や水指の管耳、福耳、釜の笛耳など、いずれも
優雅な意匠をたたえています。
耳付きの茶入には
丹波「生埜(いくの)」「立花」
膳所の「大江」、薩摩の「甫十」「甫五」
など優れた作品が多く残ります。
3月13日
「三角抹茶」
ご機嫌よろしゅうございます。
現在映画「父は家元」上映館で小山園より
限定販売している小堀優子さんプロデュース三角抹茶についてご紹介します。
映画をご覧になった方で
既に劇場で購入されていらっしゃるかもしれません。
この「三角抹茶」は一服分の抹茶を三角の
パッケージに詰めていて、
ころんとして大変可愛らしく、それでいて実用的です。
実はこの商品は小山園で製品化され
お家元のお好みの抹茶「初の森」が使用されています。
外出先に携帯したり、お抹茶を飲んだことの無い人にも
気軽に楽しんでもらいたい。
そんな思いから、従来あった個包装の抹茶に
更なる創意工夫を加え、モダンで使いやすいこの商品を作られました。
自宅で楽しむ際にも、一缶消費するまでには
風味も次第に損なわれてしまいますが
この三角抹茶では一回分づつ開封するため
香りも味もいつも新鮮な抹茶が楽しめます。
また立体的な三角の形にすることで、お茶が包装内で固まらず
振るいたての抹茶のように点てやすいのです。
今までありそうでなかった一工夫。
古の教えを守りながら
新しい試みに果敢に挑戦していく
遠州流の教えを体現し
新たな風を吹き込んで下さいました。
【告知】
映画父は家元
明日で福岡中洲大洋の上映が終了いたします。
3月4日 「引千切(ひちぎり)」
ご機嫌よろしゅうございます。
今日はお雛様にちなんだお菓子の話を。
雛祭りのお菓子と言って思い浮かぶのは
菱餅などがが一般的ですが
京都ではこの雛祭りの季節に必ず店先に並ぶ
「引千切(ひちぎり)」というおかしがあります。
餡に小麦粉や米粉を加えて蒸した
「こなし」や蓬(ヨモギ)の入った「草餅」などを
杓子のような形にして中央にくぼみを作り、
端は引き千切った形にします。
元々宮中行事で子供の幸せを祈願する儀式で用いられた
「戴餅(いただきもち)」が由来とされ
猫の手を借りたいような時に餅を丸める手間を惜しみ
引き千切ったことにちなんでいるといわれています。
これが長い年月を経て和菓子職人の手によって磨き上げられ
現在の形となりました。
ちょっとユニークな形をしていて
東京でもそのお菓子を目にする機会が増えました。
ご興味ありましたら、お近くのお菓子屋さん
を覗いて見てください.
【告知】2014年2月9日(日)、福岡中洲大洋にて実施されました、
ドキュメンタリー映画「父は家元」の御家元の舞台挨拶の模様です。
http://www.youtube.com/watch?v=3hj7R7Q326w&feature=youtu.be
映画 父は家元 公式ホームページ
2月13日 「雪の日には紅梅一輪」
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は梅にちなんだお話をご紹介します。
遠州の「綺麗さび」と利休の「侘び」
この違いをよく表すエピソードがあります。
ある雪の日、利休がお茶室にお客様を招きますが
その席の床の間には
掛物も花も何も飾ってありませんでした。
利休は
「雪も花である。 雪の日に花は要らぬ」
と話しました。
一方、遠州は
「雪の日には紅梅一輪」
と言っています。
利休の求めるのは
自然の中に見出す厳しさも含んだ美しさ
それと対照的に
雪の路地を抜け、席中に入ってうつる紅梅の色に
ほっと温もりを感じてほしいという
遠州の美意識
それぞれの生きた時代が
その精神性に反映されて生まれた
美しさです。
【告知】
映画 父は家元 上映案内
・テアトル新宿 21日まで
・横浜ニューテアトル 14日まで
・福岡中州大洋 21日まで
・金沢シネモンド 3月8日~21日
・名古屋 伏見ミリオン 4月5日~18日
・青森 シネマ・ディクト 4月19日~5月2日
映画 父は家元 公式ホームページ
2月10日 梅
ご機嫌よろしゅうございます。
今日はそろそろ見頃を迎える
「梅」についてお話をしたいと思います。
今日私達が花見といって思い浮かぶのは
桜かと思いますが、
奈良時代には花といえば
梅を指すことの方が主でした。
お雛飾りにも添えられる
「左近の桜 右近の橘」は
平安京の紫宸殿(ししんでん)
に植えられていたものですが
これも創建当初は桜ではなく
梅が植えられていました。
桜が広く好まれるようになるのは
万葉の奈良から世代も移り変わった
平安時代もなかばからのことです。
【告知】
福岡中洲大洋にて「父は家元」
上映開始。
(1)10:10(2)12:05(3)14:00
15日以降は未定
映画 父は家元 公式ホームページ