11月 19日 茶壺の中
ご機嫌よろしゅうございます。
十一月も中旬となり、挽きたての新しい抹茶が
各茶家でも楽しまれていることでしょう。
自分で石臼で挽いたお茶は、手間はかかりますが
その香りも色も格別です。
遠州公も、水屋常住の大きな石臼とは別に、
手元でちょっとお茶を頂きたい時に、少量
挽ける「小車」という銘のついたコンパクトな茶臼を
持って挽きたてのお茶を楽まれていたようです。
さてこの茶葉が詰められてくる白い袋は
なんという名称かご存知でしょうか?
八十八夜につまれたお茶は
濃茶にされるごく良質の葉茶を、
半袋(はんたい)と呼ばれる袋に、10匁(もんめ)(37.5g)ずつ
詰めていきます。
この半袋、半分の袋と書きますが、
これはもともと20匁が一つであったのですが
お茶が大変貴重で高価だった当時は、
20匁を求めるにはなかなか手が出ないので、
その半分の10匁を袋に詰めて、「半袋」
としたのだそうです。
10月 2日 名残り(なごり)
ご機嫌よろしゅうございます。
10月に入り、近年の猛暑もようやく
影を潜めるころとなる頃となりました。
10月も半ばともなると、茶の湯の世界は
名残りと呼ばれる時季となり
あとわずかとなった風炉の時期を名残り惜しむ
夏、床の間を彩ってきた草花に名残りを惜しむ
名残りには様々な意味がありますが、本来の
茶の湯の名残りというのは、そのような自然の季節感
ではなく、前年の口切り以来使用していた茶壷の中の茶が残り少なくなった
ということからくる意味です。
五月、八十八夜の頃に新茶が摘まれ、その茶葉を
そのまま乾燥させ、袋に入れて茶壷に詰めます。
これを一定の温度で保存し、十一月に(旧暦の10月)初めて壷の口が
開かれ、その年の新茶が飲まれることになります。
そしていよいよ残りわずかとなった茶葉を名残り惜しみながら季節のうつろいを感じる
茶の湯ならではの言葉といえるのです。
5月2日 八十八夜
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は八十八夜です。
「夏も近づく八十八夜…」で始まる歌が頭に浮かびます。
八十八夜は立春から数えて八十八日目の日をさします。
八十八という字を組み合わせると「米」という字になる
ことから、農家では大切な日とされてきました。
この日を境に本格的な農事にとりかかります。
お茶どころでは茶摘みの最盛期となります。
お茶の葉は、一度でも霜に当たると駄目になってしまいます。
そのため昔は藁をひき、霜を防いだようです。
この八十八夜に摘まれ、
茶壺に詰められた碾茶を、十一月に取り出すのが
「口切(くちきり)」です。
この茶葉を詰めた茶壺は、茶道創生期においては、
茶道具の第一の道具でした。
今では想像しにくいことですが、茶入が茶壺に変わり人気があがるのは、
それよりも後のことになります。