9月30日(金)能と茶の湯

2016-9-30 UP

9月30日(金)能と茶の湯
「比丘貞(びくさだ)」

ご機嫌よろしゅうございます。
今日は狂言「比丘貞」をご紹介します。

一人息子の元服親になってほしいと頼まれた老尼が、
自分の通称の「庵」をとって庵太郎(あんだろう)
と名付けます。
名のりも自分の比丘と、相手の家の通り字である
「貞」を合わせて比丘貞とつけ、祝言の舞を舞う
というあらすじです。
武家階級では元服の際、字アザナと諱イミナのふたつを名付ける
習いがありました。この格式のある名付けがゆるみ、
いわば「ごっこ」に近いようになった様子が描かれています。

老尼は烏帽子親を頼まれて悦びますが、
与えるべき諱をそもそも持っていません。
そのため比丘などとつけているところが
面白いところ。

この「比丘貞」の面に姿が似ていることから
遠州公が銘をつけたのが
瀬戸真中古窯茶入「比丘貞」です。
茶入の胴の締まった姿が、確かにユーモラスな
面の顔を想起させます。
遠州公の所持の後、数人の所有者の手を経て松平不昧が所持しました。