5月 23日(月)ほととぎす

2016-5-23 UP

5月 23日(月)ほととぎす

 

ほととぎす鳴きつる方を眺むれば

ただ有明の月ぞ残れる

 

ご機嫌よろしゅうございます。

初夏の訪れを知らせるものに、ほととぎすが挙げられます。

平安の時代、貴族の間ではほととぎすの第一声である

「初音」を聴くのがもてはやされました。

山鳥の中で朝一番に鳴くといわれるほととぎすの声を

なんとか聴こうと、夜を明かして待つこともあったようです。

先ほどの歌は百人一首、後徳大寺左大臣、藤原実定の歌です。

 

ほととぎすが鳴いたその方角を眺めやると、

そこにはただ明け方の月が暁の空に残るばかりだ。

 

実定は定家の従兄弟に当たる人物で、

詩歌管弦に非常に優れた人物でした。

祖父も徳大寺左大臣と称されたので、

区別するため後徳大寺左大臣と呼ばれます。

実定も夜を徹して初音を待っていたのでしょうか。

一瞬のほととぎすの声に、はっと目をやるとそこに姿はなく、

夜明けの空にうつる月の明かりだけがみえる

聴覚世界と視覚的世界を美しく詠み込んだ歌です。