向栄会 菓子 源田萬年氏・恒房氏
2018-10-11 UP
宗家研修道場の稽古や遠州流茶道の茶会では「源太萬永堂」の
お菓子をよくいただきます。
源田萬年氏は、修業先で戸川宗積先生のお稽古場にお菓子を納めるようになり
その後独立、宗積先生から本名の「源田」にちなんで、歌舞伎「悪源太」から
「源太」の名前をいただきました。
悪源太は豪勇で知られた源義平のあだ名。強いという意味と源が太るという
縁起の良い字ということでこの名がつけられました。
以来50年、都内の茶室をほとんど知りつくし、その茶室の照明を考慮に入れた上で、
御子息の恒房氏も大学卒業後、父・萬年氏に師事、共に四季折々の菓子を作り出しています。
最近御家元にご指導いただいた中で印象に残っているのは、昨年の東京茶道会の2月、招待茶会のお見本をお届けしたときということで、その際のお話を伺いました。
「例年は新春の茶会ということで梅をモチーフにした菓子をご提案させて頂いておりますが、前年御家元が華甲をお迎えになられたこともあり、もっとおめでたい感じに祝意を表したものにしてはどうかとお話しを伺いましたので、酉年にも因んだものとして
丹頂をイメージしたものをいくつかお持ちいたしましたが、単に丹頂ではありきたりな見慣れた雰囲気で物足りなく思うとご指摘いただきました。
どうしたものかと思っていたところ、見本の中の茶巾絞りでお持ちしたものを
お家元がお手持ちの鶏の香合のような形で出来ないかとお話しがありました。
鶏は新しい年の日の出とともに一番最初に鳴く「明けの鳥」で大変縁起の良いものとされています。
いいアイデアを頂いたので、それなら工夫してなんとか形にしてみようと思いました。
思ったよりもなかなか難しく、最初は思うような形にならなかったり、揃わなかったり、頂点の感じが上手くいかなかったりと、多少苦戦しましたが、、、
当日お届けしてご覧頂いた時にこれならいいんじゃないかというような一言で及第点はいただけたのかなと一安心しました
もうひとつ思案していた菓銘も「鶏頭」となるほどと思うぴったりな(絶妙な)ものを付けて頂きました。席中でも御常家元のご趣向に皆様からも好評でした。」
お茶席で出会うお菓子の一つ一つに込められた意味と想い、
それらを心で感じながら大切にいただきたいものです。