2月5日(金)能と茶の湯

2016-2-5 UP

2月5日(金)能と茶の湯
「高砂(たかさご)」

ご機嫌よろしゅうございます。
今日は「高砂」についてご紹介します

平安時代前期の延喜(えんぎ)の頃。
都を見物しようと九州からのぼってきた友成一行は、
高砂の浜辺に立ち寄り、松の落葉を掃く老夫婦に
出会いました。
老夫婦は相生(あいおい)の松のいわれについて、
高砂の松は『万葉集』、住吉の松は『古今和歌集』
をあらわし、歌が盛んに詠まれ世の中が
平和であることを象徴する松なのだと語ります。
そして我ら夫婦は、それらの松の精なのだと
正体を明かし、住吉で待とうと告げて小舟に
乗って姿を消します。友成らが月夜に船を出し、
住吉の浜辺にやってくると、西の波間から
住吉明神が現れます。明神は長寿をほこる
松のめでたさを称え、さっそうと舞を舞います。
澄んだ月明かりのもと、舞につれて、
松の梢に吹き寄せる心地よい風の音が聞こえ、
明神は平和な世を祝福するのでした。
(※日本芸術文化振興会参照)

「高砂」は、祝いの曲として広く知られ、今でも
祝言やおめでたい席でうたわれます。
次週はこの「高砂」に関連した茶道具を
ご紹介します。

2016-2-1 UP

2月1日(月) 向栄亭の床の間拝見

 

ご機嫌よろしゅうございます。

今日から二月、そして二月の四日は 立春です。

寒さは依然として厳しいですが そろそろ春の気配を感じられる頃になりました。

さて、今日は二月の宗家稽古場の床の間をご紹介します。

床  紅心宗慶宗匠筆 柳緑花紅(やなぎはみどり はなはくれない)

花  加茂本阿弥椿 木五倍子(かもほんなみつばき きぶし)

花入 志戸呂 鶴首

床の間の掛け物の言葉は 中国北宋時代の政治家であり詩人である

蘇東坡(そとうば)の「花紅柳緑真面目」 花は紅(くれない)柳は緑(みどり) 真面目(しんめんもく)

という言葉に由来するものです。

花は紅、柳は緑、このあたりまえのことが、

とりもなおさず真理の実相である

自然のあらゆるものがそのままで 真実を具現しているといっています

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1月29日(金)能と茶の湯

2016-1-29 UP

1月29日(金)能と茶の湯
「翁」

ご機嫌よろしゅうございます。

新年を迎えると、「翁」とよばれる演目が
必ず各地の能舞台で演じられます。
「翁」は能の中でも神能の特殊な演目で
「能にして、能にあらず」と言われ
霊的な力を授けられた”神の使い”である翁の舞は、
国家安静、五穀豊穣を祝う神事とされています。

「とうとうたらりたらりら
たらりあがりららりとう…」

という謡にはじまり、舞の間に翁が翁面を
つけるのですが、観客の前で演者が面をつけるのは
この曲だけ、この面をつけることにより
翁は神格を得ます。

遠州公がこの「翁」にちなんで銘をつけた
茶入があります。「大正名器鑑」には
「作行の古雅なる、黄釉のなだれの物寂びたる
人をして翁の面に対する想いあらしむ」
と記されています。

瀬戸破風窯のその茶入には挽家蓋・内箱蓋・仕覆蓋
の書付を遠州公自らしており、愛蔵ぶりが伺えます。

1月 25日 (月)君がため…

2016-1-25 UP

1月 25日 (月)君がため…

ご機嫌よろしゅうございます。
今日はこの季節にちなんだ和歌をご紹介します。

君がため 春の野に出でて 若菜摘む

我が衣手に 雪は降りつつ

あなたにさしあげるため、
春の野原に出かけて
若菜を摘んでいる私の着物の袖に、
雪がしきりに降りかかってくる。

光孝天皇がまだ時康親王だった若い頃、
大切な人の長寿を願い春の野草を贈った際
添えた歌です。
昔から、新春に若菜を食べると邪気を払う
ことができると考えられてきました。
現在でも、1月7日に「七草粥」を
いただく習慣が残っています。

1月 22日(金)能と茶の湯

2016-1-22 UP

1月 22日(金)能と茶の湯
「利休と能」

ご機嫌よろしゅうございます。

侘び茶の大成者である千利休は、
大変能が好きで、勧進能といわれる
能の興行ごとに足を運び、宮王道三・三郎
兄弟の能楽師の楽屋をときおり訪ねていた
といいます。
また、この三郎には宗恩という妻がおり、
利休の様々な質問にも明朗な回答をする
聡明な女性でした。

利休は謡曲をこの兄の道三に学び、道三は
利休に茶を学ぶ大変親しい間柄であったことも
あってか、
天正九年(1581)に利休の先妻が
亡くなった翌年、三郎を亡くしていた宗恩と
利休は道三を親がわりとして結婚しています。

また利休には実子道安がいますが、
三郎と宗恩との間にできた息子道安と同い年の
少庵を養子とします。
この少庵が千家第二代であり、三代目は
少庵と利休の娘お亀との間に生まれた宗旦です。

この宗旦と遠州公は同い年になります。

1月18日(月)お稽古場の風景

2016-1-18 UP

1月18日(月)お稽古場の風景

ご機嫌よろしゅうございます。
今年の点初めも無事に皆様をお迎えし
宗家道場では本年初の稽古が始まりました。

床の間を拝見し、お稽古の支度
新年を寿ぐ清々しい道具組に
気持ちも自然と引き締しまります。

そんな宗家道場の稽古場の様子をお伝えします。

床  紅心宗慶宗匠筆 千年丹頂鶴
花  曙椿 白梅
花入 青磁 鳳凰耳

掛け物の「千年丹頂鶴」は「万年緑毛亀」
(まんねんりょくもうのかめ)
と対句になります。
「鶴は千年、亀は万年」という言葉も
ありますように、鶴と亀は共に長寿と福寿を
象徴するものです。
新年や慶事の際に掛けられる、
祝慶を尽くした語です。
千年丹長鶴

1月 15日(金)茶の湯と伝統芸能

2016-1-15 UP

1月 15日(金)茶の湯と伝統芸能
「能について」

ご機嫌よろしゅうございます。
今日は能と茶の湯についてのお話を
して行きたいと思います。

庶民の芸能から昇華され、室町時代には
足利将軍家の力を得て社会的地位を獲得した能

そして、同じく室町時代に侘び茶が大成し
権力者の支持を得て発展した茶の湯
江戸時代には、能・茶の湯共に武家社会の
嗜みとしての地位を確立していった歴史があります。

またその精神性においても
村田珠光の言葉に「月も雲間のなきは嫌にて候」
とあるのを、室町後期の能役者・金春禅鳳が
「珠光の物語とて、月も雲間のなきは嫌にて候。
これ面白く候」
と語っているように
茶の湯の「侘び」と能の「幽玄」の世界には
相通ずる点が多くあります。

そういった面からも茶の湯の道具には、
能に由来する銘が多く見受けられるのです。

能の銘がつけられることによって、
一つ一つの能の世界が茶の湯に広がります。

1月 8日 (金)茶の湯と伝統芸能

2016-1-8 UP

1月 8日 (金)茶の湯と伝統芸能

ご機嫌よろしゅうございます。
先日6日は二十四節気の小寒にあたりました。
この小寒から節分までが「寒の内」と
呼ばれ、厳しい寒さの始まりです。

さて、本年から能・狂言について
毎週金曜日にご紹介する予定でおりますが、
茶の湯と能、花などの芸能は同時代に
昇華された芸能と考えられています。
遠州公も茶道具の銘に和歌を用いた歌銘を
つけたことはよく知られていますが、
和歌だけでなく、能や狂言からも銘を
つけている道具が多くみられます。

今年の前半では能・狂言の演目をご紹介しながら
所縁の茶道具をいくつかご紹介していきます。
後半では落語の中に登場する茶の湯を
ご紹介します。
落語の祖とされる安楽庵策伝は遠州公とも
所縁の深い人物です。
近世、茶の湯が人々にどう親しまれていたのか
その笑の中に見えてくるのではないかと思います。

1月 1日(金)元旦

2016-1-1 UP

1月 1日(金)元旦

皆様
明けましておめでとうございます。
本年も遠州流茶道の精神である
「茶の湯を通して心を豊かに」を胸に、
日々の生活に茶の湯の心を取り入れ
ていきたいと思います。

本年は宗実御家元の華甲の年に当たり
遠州流茶道にとっても大変重要な一年間と
なります。
9月17日のお家元の誕生日 には記念の大茶会がと祝賀会行われます。
全国の門人一丸となって
関連行事に取り組み、盛り上げていきましょう。

さて、本年から毎週月曜日は季節の便り、
金曜日は伝統芸能と茶道をテーマに
主に能・狂言・落語について、
ご紹介していく予定です。
本年もメールマガジン「綺麗さびの日々」を
よろしくお願いいたします。

12月 30日 (水)遠州流茶道の点法

2015-12-30 UP

12月 30日 (水)遠州流茶道の点法
「大晦日の茶」

ご機嫌よろしゅうございます。
明日はいよいよ大晦日。
新しい年を迎える準備はお済みでしょうか?

宗家では明日、恒例の除夜釜が行われます。
寄付で温かい御手製の蕎麦がきをいただいたら
成趣庵で家元がお客様に濃茶を点てて下さいます。

歳暮のお茶では挽貯の茶入のように、普段裏方で
使われているような道具類が使われたり
深くて温かみの感じられる茶碗、会席では寄向(よせむこう)
といって色々な種類の焼き物をとりまぜて、
方々から寄せ集めてきた向付などをお出しして
暮れの風情を楽しみます。

普段の茶事では広間に席を移していただく薄茶も
年の瀬では薄茶を続けて差し上げる配慮をしたりします。

一年あっという間に過ぎてしまった名残惜しい
気持ちと、また新たな年が始まる期待感、
その二つの気持ちが入り混じった特別な時間。
茶の湯では、その想いを道具にのせて
一同お茶をいただきます。

さて、今年のメールマガジンも今日で最後。
本年もありがとうございました。
来年のメールマガジンも新たなテーマで
配信していく予定です。

それでは皆様
どうぞよいお年をお迎えください。