茶の湯とスポーツの秋
2019-11-1 UP
今年は9月に入っても残暑が厳しく、全国的に台風も多く、その状態は10月にまで及んだ。台風や自然災害に関していうと、それは日本国内だけではなく、世界的にその傾向がみられる。以前より私は申し上げているが、これを、人類が自然環境をいかに冒とくしてきたかという事実に対する、大自然からの警鐘ととらえ、私達は環境にもっと謙虚であらねばならないと思う。
さて、表題にあるとおり、秋になると茶道の世界では月や紅葉などを主題とする茶会が多く催される。感覚的には旧暦と違い、晩秋あるいは初冬となる霜月であるが、ようやく日中も暑気を感じることがなくなるという季節である。
一方、スポーツの秋という表現も、昔からよくいわれたものである。昭和39年、1964年の東京オリンピックは、正しくこの言葉を具現化した大イベントであった。そしてその開会記念として10月10日が体育の日に制定されたのであった。
この10日という日は、全国的に晴天であることが多い日といわれている日である。しかしこの体育の日も、現在では連休を作るという考え方から、日程は定まらず、毎年異なっているのである。なぜ、日本は本来あるべき根拠を、さも当たり前のごとく変えてしまうのであろうか。こういう姿勢というのは何事にも影響が出やすいものである。それも良い方向というよりは、悪い方向が多いと思う。明年の東京オリンピック・パラリンピックも、この季節にすれば、選手も応援する私たちも、一番望ましいのである。が、すでに酷暑の真夏に開催することは、皆さま周知のことである、聞けば、米国の放送権の問題等、すべて経済的、あるいは政治的理由が優先されているという。これでは、アスリートファーストではなく、スポンサーファーストであり、本末転倒である。競技開催時間も、暑さを避ける意味とは別に、米国TV中継に配慮して、早朝から行われる場合も多いようである。これでは、コンディションという面において、選手達には大変な負担をかけることになる。とはいえ、決定事項であるので、その条件のなかでベストを尽くされることを祈るばかりである。
宗家では、娘の宗翔を中心に、日本を代表するアスリートの方たちに、茶道の心を伝える活動を行っている。私も多くの監督をはじめ、指導者の方々や選手たちとお話をさせていただいている。最近対談させていただいた日本柔道の井上康生監督には、茶道に対して、非常に評価をいただいた。私の最も印象に残ったのは、監督が、選手たちにはスポーツで一流になるのはもちろんであるが、人間的に豊かになってもらうのが最終的な目標だと言われたことである。
「茶の湯を通して心を豊かに」私の願うところと全く同じ思いをうかがったのである。