点初めをおえて
2023-3-1 UP
去る1月10日から15日において催された点初めは、穏やかな天候に恵まれ、6日間、無事に終えることができた。当然のことながら、感染症対策に配慮しての会ではあるが、迎える側、そして参会されるお客様との相互の思いやり、協力・協調により、新春らしい時間と空間を提供できたのではと安心しているところである。やはり宗家にとっては、この点初めは一年の始まり、スタートダッシュの象徴となる最大の行事であるので、私にしても、今年一年の過ごし方には大いに影響がある。また、遠方から参会されるお客様と顔を合わせ、挨拶をかわすことが、私の財産になり、エネルギーにもなる。二年前の中止になった年の私のモチベーション維持の辛かったことを思い出すとともに、やはり茶の湯のとっては茶会のありがたさ、意義を再確認した次第である。
さて茶会に訪れたときに一番の楽しみといえば、その日の趣向であると思う。そしてその趣向を表現する最もわかりやすいものが、掛物や花の飾られた床の間、そして各茶道具の取り合わせということになる。
私の茶会に何回も参加されている方はよくご存じだと思うが、私はこの取り合わせに関しては、だれよりもこだわりがあると思っている。そこで大切にしているのは、季節感やその会の趣旨を真正面に捉えたうえでのストーリー性である。お客様が門をくぐり玄関に入られるときから、寄付、濃茶、福引、薄茶まで、すべて一つの物語としてつなげていく。一席ごと独立した場所ではあるが、何かしらつなぐことを考えて取り合わせていく。このつなぎは、実は昨年末の私が行なう歳暮の茶事や、除夜の釜から始まっているのである。こうして自分のなかで万全の脚本と演出を考えたうえで、点初め初日を迎えるのである。そうして第一席を行い、初日を無事完了すると、今日はこのところがよかったとか、明日はあそこを直そう等と改善点が思い浮かんでくる。さらにおもしろいというか、毎回のことではあるが、二日、三日と行っているうちに、お客様との会話や、やりとりのなかで、新しいつなぎや私のアイデアを補強してくれるものが見つかるのである。
こうして点初めというものを一つの例として考えていえるのは、茶会とは主客の交わりがあってこそ成立するということである。
皆様も、一つひとつの茶会を小さなことからでも、自分なりの発見をされると、より茶道の奥行きや楽しさを感じられると思う。