極月に思う

2020-12-1 UP

 令和二年がこの月をもって幕を閉じようとしている。思えば本年の始まりは、昨年五月、天皇陛下のご即位にともない、元号が改まって初めて迎えた正月という華々しい賑やかなスタートであった。加うるに本来、この夏には東京オリンピック・パラリンピックが開催されて、日本中が大いにお祭り気分になるはずであった。数年前からの、海外観光客の増加も、今年はピークを迎えたはずであったろう。日本中では、ホテルを始め、あらゆる業界において海外からの渡航者に対応すべくさまざまな設備投資などを行なったが、残念ながらそれらはすべて、明年へと持ち越しとなってしまった。
 茶道界においても、オリンピック・パラリンピックに向けて、多くの「おもてなし」の催しが準備されていたが、これも中止になっている。私が会長をつとめている和文化産業連携協議会は、各分野が独自色を活かした取り組みが計画されていたが、これも同様である。
 こう書いていくとなにもかもが中止、無駄になってしまったように考えがちである、実際、日常的に行なっていたことが、仕事の上でも生活の面でも、ずいぶんと縮小となったり、あるいは無くなったりしたことも多く、そのことによる不安やストレスに押しつぶされてしまう人もいた。
 しかし、そう考えるのではなく、反対からものごとをとらえることで、この難局を切り拓くという姿勢が、これからの私達の目指すべき道であると思う。つまり、出来ないことがあった分、出来たこともあったと考えるように自分自身の思考方向を探すということである。いままで、ついつい忘れがちだったり、手付かずであったりしたことが、この期間、かなり取り組めたのではないだろうか。私は身の回りの整理整頓ができた。部屋の整頓をするということは、心の整理にもなり、リフレッシュにもつながってくる。また新しい発見も、たくさんあったと思う。現状通りではいかないということは、別の方法を模索せざるをえない。つまり、そこにアイデアが生まれ工夫がめぐらされるのである。私は今年一年をそうとらえたいと改めて考えている。
 一二月は師走、臘月〔ろうげつ〕、極月〔ごくげつ〕、氷月〔ひょうげつ〕、暮歳〔ぼさい〕などさまざまな異名がある。私は、すべてのことが来年からリセットするという意味で、極月と呼ぶのがふさわしいと考えている。
 また明年、元気でお目にかかりましょう!!