望みから実りへ
2021-2-1 UP
令和三年のお正月、皆様いかが過ごされたであろうか。昨年来のコロナ禍のなかで迎える初めての新年である。と書きながら、去年の正月は、そのような気分はまったくなかったということを改めて感じる次第である。
宗家の除夜から三ヶ日においても、変わらないこと、変わったこと、いろいろであった。
昨年の除夜釜は常ならば、直門の指導にあたっている教授者をはじめとして、30名程度の人たちが参会するのであるが、お客様は無しとし、宗家内弟子のみで行なった。年明け元旦零時の大福茶は、流祖堂に供茶をした後、家族だけで一服いただくのはいつもの通りである。翌朝の埋火を火種としての初炭は例年のごとく私一人で勤めた。三ヶ日は皆でお節料理をいただくのは同じであるが、お重などの取り回しは、家族でありながらもできるだけ避け、銘々に料理を盛る形をとった。
2日は例年であれば、家元職方はじめ、宗家出入の関係者の新年の挨拶があるのであるが、これもなくなった。3日の菩提寺広徳禅寺への墓参は行なったが、ほかの檀家の人たちは少ないようだった。その後、いつも初詣にうかがう神社など、多くの人が集まる場所は極力避けるようにしていた。
これらの行動というのは、すべて正月一番の行事である「点初め」を挙行するためといってよい。この点初めを実施するかどうかは、昨年末からいろいろと考え、悩むことがあり、とてもここで述べ尽くすことはできないが、万全の対策を整えて準備をしていた。
しかし1月2日の夕刻に、東京都知事ならびに埼玉、千葉、神奈川三県の知事が、政府に対して緊急事態宣言の発出要請をしたことで、状況は急変した。私の心はその重要性をかんがみて、すぐに点初め中止の決断をするにいたった。
その後はその善後策に追われ、宗家事務局員の仕事始めも4日に繰り上げられ、出社可能な人たちで一斉の電話連絡が始まった。
こうして一月の一大行事は今年は中止となってしまった。しかし今、私の思いは、「このままでは終わらせない。必ず、点初めに代わるおもてなしの場としての茶会を行なう」という決意を新たにしている。そのときを皆様ぜひ期待していただきたい。
おわりに本年のお題「実」にちなんで詠んだ私の和歌を紹介する。
去年今年〔こぞことし〕 望みの懸け橋
新しき茶の湯に託して 明日の実りを
皆様のこの一年のご多幸をお祈り申し上げる。