出張考

2025-4-1 UP

 昨年来、出張する機会が頓〔とみ〕に多くなってきており、今年に入ってからもすでに一〇回以上を数えている。移動は、飛行機と新幹線が主であるが、在来線などもその中間を連絡する手段として、かなりの回数を使用している。

 その折々に感じるのは、海外渡航者の圧倒的な人数である。さらに飛行機はあらかじめ荷物を預けることが通常であるが、新幹線では車内持ち込みとなる。その荷物の多さはもちろんであるが、大きさは少なからず電車の遅延に影響を及ぼしていると感じる。大きいスーツケースを持ち込む際、どうしても車両の出入り口が混雑してしまう。また客室内の棚に荷物を上げる客が多く、着席する人が停滞する場合も自然と発生するので、車内に入るまでに時間がかかるわけである。そういった種々の要因が重なると、10秒、20秒、あるいは1分、2分と発車が遅くなってしまう。この一年ほど、世界一の正確さを誇っていた新幹線が、何度となく予定時刻をオーバーすることに出合った。また最近は台風などの天候の状況で、前日から計画的に運休したり欠航する場合が多くなっている。

 今年に入ってからも、私の福岡出発便が、前日にあらかじめ欠航便となったことがあった。そうなると、前後の便が運航予定である場合、それに切り替えることになる。しかしそれは多くの旅行者が同様の手続きを試みるわけで、予約は至難の業である。私の場合、それは事務局のスタッフがなんとしてでも予約を入れようと努力してくれるので、何時間かの後に、席を確保してもらえている。ところが、それほど苦労して入手したチケットであるはずが、機内に入ってみると、空席が結構ある場合も少なくない。どういうことなのかと考えるに、予約待機中にその日の出張を中止する人も多いということから起きる現象なのだと気がつかされる。また福岡空港に到着すると、ロビーにいる人の数もあきらかに少ない。航空便が、一社だけでも四便、五便と欠航になれば、それは当然の結果となるのである。そしてこのことでも、もう一ついえるのは、そこまで必死になって出張する人たちが、少なくなったということである。少なくとも私たちの世代は、なにがなんでも目的地に行かなければならないと考える人が多かった。私自身はあまり経験は多くないが、昭和時代の満員電車がその例である。

 いまの時代、現場にたとえ行かれなくても、オンラインという手段が可能となった。たいへん便利になったものである。

 とはいえ、私の場合はどうであろうか。今日は行けなくなりましたので、オンラインで……とはなかなか言いがたい。オンラインが可能な場合・有効なときと、やはりライブで、空気感が……と、両方の良し悪しでこれからの世は選択されていくだろうと思う。まあ、でも私は、リアルを追求していく方法を選択していきたいと思っている。