再開と再会

2022-7-1 UP

 先月号にも触れてはいるが、四月・五月・六月と月を重ねる度ごとに、世の中が活気を帯びてきている。マスクで顔を半分覆われてはいるが、人々の目に明るさを感じるようになったのは、よいことである。

 私も、出張稽古以外の行事も多くなってきている。なかでも、茶会の再開はやはり嬉しいかぎりである。遠州流としては、点初めと遠州忌茶筵の二大行事を、他に先駆ける心と覚悟で行ってはいたが、その後は四月の各流派合同の東京茶道会招待茶会を皮切りに、広く一般の方を招く茶会が各所で始動してきている。

 五月に入り、京都大徳寺孤篷庵における、公益財団法人小堀遠州顕彰会主催による遠州忌茶会が行われた。濃茶を山雲床席において永坂知足庵氏、薄茶は忘筌席で戸田一玄庵氏が担当された。いずれも遠州公ゆかりの名品で取り合わされ、前日の雨で新緑の美しさにより輝きを増した孤篷庵の初風炉を満喫する一日であった。新たな試みで、入席を時間制、一方通行で行ったが、混乱もなく非常にスムーズに運営ができたようである。私の宗家席は展観のみとし、其心庵と旧牌堂の二席を使用し、流祖の所持していた茶箱をご覧いただいた。茶会の無事に安堵の胸をなでおろすとともに、参会のお客様の表情がいきいきとしていたことが、この日一番の喜びであった。

 五月は、月初の大阪、そしてこの京都、奈良、福岡、金沢、名古屋と恒例の場所以外に、秋田県由利本荘市においての矢島茶会に赴いた。矢島茶会は、当地の生駒顕彰会主催行事で、今年で十八回を数える。会場は曹洞宗龍源寺である。矢島藩初代藩主の生駒高俊公の父、生駒正俊公(讃岐国高松藩三代藩主)と小堀遠州公は、ともに藤堂高虎の養女を妻としていたので、この縁により生駒家菩提寺での茶会が行われているのである。本来ならば二十周年であった今年だったが、コロナ禍により、三年ぶりの開催である。前号に記述した通り、東北地域においてのコロナ感染症に対しての意識は、私たち東京や大阪のそれとはかなり違い、イベントへのハードルは高い。それを乗り越えての開催である。

 茶会の前日、久しぶりに降り立った秋田空港に懐かしさを覚えながら出口に向かうと、ドア越しに秋田の先生方が迎えに来られていた。私の姿を見て、すでに手を振っておられた。それを見て感無量となった。そして外に出て直接言葉を交わす。長期間できなかったことの再開による再会。人と人とが出会う幸せを本当に感じた瞬間である。茶会当日、さらに多くの秋田連合会の皆様との久しぶりの再会。リモートではないリアルが一番であることを改めて気づかされた。心を交わすからこそ、お互いの勇気も出てくる。此度ご奉仕させていただいた献茶は、私にとってなにか特別のものであった。やはり茶の湯はなにごとにも代えがたい力をもっている。