2月6日 (月) 宗家道場の床の間拝見
ご機嫌よろしゅうございます。
立春も過ぎ、冬の間張り詰めていた氷を
春の風が解かしはじめます。
宗家道場の床の間も、新しい季節を感じさせてくれます。
床 紅心宗慶宗匠筆 松竹梅絵賛 三幅対
松無古今色 竹上下有節 柳緑花紅
花 曙椿 蝋梅
花入 染付高砂
こちらの掛物はご先代がおかきになられた三幅対です。
「松に古今の色無し」「竹に上下の節有り」は対句で
松は常に青々として常住不変の一方、竹の節は差別(区別)
の存在を表します
「柳は緑、花は紅」は、自然のあらゆるものがそのままで
真実を具現している様を表しています。
三幅対は、これらの禅語の松、竹、柳の部分を絵で、
他を文字で書いています。
花入は高砂。新春にふさわしい花入です。昨年の2月の
メールマガジンで、能「高砂」と花入についてご紹介しました。
こちらもご参照ください。
1月 30日 (月)来月の行事
豊かなる常磐の松の若緑
なお立ちそはむ春ぞ久しき
この詠歌は寛永5年(1628)
遠州公五十四歳の時にの消息文の
中に「御夢想 三日立春」と題して詠まれた歌です。
2017年の立春は2月4日です。
さて、来月、2月25日(土)遠州茶道宗家では
菅原道真公を祀る「御自影天神供養茶会」が
催されます。
このお茶会では床の間に菅原道真公の御自影の軸が
かけられます。
これは遠州公が信仰されていた天神様の御自影に、
大徳寺156世江月宗玩が賛をなされた一軸で、
永く小堀家に伝来し、毎年2月25日に
ご供養しています。
読経の終わる頃にはその頬が赤く染まるという
伝説のある、霊験あらたかな天神様です。
引き続き催される茶会には遠州公ゆかりの茶道具が
用いられます。
1月 23日(月) 落語の中の茶の湯
ご機嫌よろしゅうございます。
新春には初笑いを求める人々で
寄席が活気づきます。
今日は落語の祖といわれる安楽庵策伝について
ご紹介致します。
誓願寺法主でった安楽庵策伝は
遠州公とも交流のあった人物でした。
遠州公の伝書をもとに茶書「草人木」の
編集にも関わっています。
策伝は庶民に仏の教えを優しく
楽しく説くため、いわゆる「落し噺」を
高座で演じて布教しました。
この話をまとめ、板倉重宗京都所司代の求めに
応じて献呈した笑話集が「醒睡笑」です。
うつけ・文字知顔・堕落僧・上戸・うそつきなど、
多様な庶民の登場人物がつくる、豊かな笑いの世界。
のちの落語、近世笑話集や小咄集に大きな影響を与えました。
この「醒睡笑」は8巻からなり、全1039話の滑稽話
が収められています。
その中に今日でも演じられる「子ほめ」「無筆の犬」
「かぼちゃ屋」「平林」「星とり竿」など、
現在に語り伝えられている落語の元ネタとなった話がみられます。
1月 20日(金)茶の湯にみる文様
「鶴」
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は日本に馴染み深い鳥「鶴」の文様を
ご紹介します。
会席においては江戸時代、高級食材として珍重
されていました。また将軍自ら「鶴御成」という
狩で捕った鶴を京都御所へ献上し、正月に登城した
諸大名に吸い物として賜りました。
「鶴は千年、亀は万年」などと言われるように
亀と共に長寿の象徴とされている動物で、
中国では古くから仙人の鳥、仙禽とされ
松や霊芝などとともに吉祥文様として描かれていました。
鶴の型押し白象嵌文様の青磁は「雲鶴」と呼ばれます。
高麗末期の筒茶碗を「古雲鶴」とよび、
李朝中期に茶人が注文し釜山の倭館窯で焼かれたたものは
「御本雲鶴」と呼んで区別します。
野村美術館所蔵の中興名物「御本立鶴茶碗」は、
寛永十六年(1639)、将軍家の大福茶のために制作されたもので
3代将軍家光が下絵した立鶴を中央に
描き、遠州公が切形をもって釜山の窯に注文したといわれているのです。
1月 16日(月)
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は宗家のお正月にいただくお菓子
「紅白饅頭」をご紹介致します。
お客様のいらっしゃる頃合いを見計らって
温めた小ぶりの紅と白のお饅頭に、
口取りを添えてお出しします。
銘々皿は今年の干支とお家元の焼印が押され
新しいへぎの杉が清々しく映ります。
こちらは新大久保にある源太萬永堂製。
源太の名は主人の本名の源田と同じ音で、
歌舞伎などで知られている「悪源太」から
戸川宗積先生がつけられました。
「剛勇で知られた源義平のあだ名である悪源太
その上、源が太っていくという漢字から縁起も
良い」と選ばれた屋号です。
更にお目出度い「萬永堂」とご先代が名付け、
揮毫された扁額がお店に掲げられています。
本年は宗家道場のお稽古でいただく源太製のお菓子を
毎月ご紹介する予定です。
どうぞお楽しみに。
1月 14日(土)茶の湯にみられる文様
「梅」
ご機嫌よろしゅうございます。
本日は「梅」をご紹介します。
新しい年を迎え、他のどの花よりも早く花を咲かせる
ことから梅は「百花の魁」とも言われます。
梅が初めて文献に登場するのは天平勝宝三年(751)
に成った漢詩集「懐風藻(かいふうそう)」所収
葛野王(かどのおおきみ)の五言詩「春日鶯梅翫(かすがおうばいをはやす)」
で、梅に鶯の組み合わせで歌われます。
もとは弥生時時代に稲作と共に薬用として中国から
伝わりますが、その美しさに加え、香り高い梅の花は
やがて貴族の間で愛でられる花となっていきます
画題としても多く描かれ、茶の湯においても様々な道具に
描かれ、目にすることも多いことと思います。
裂地としては利休が好んだ利休緞子や
大名物「唐物丸壷茶入 利休丸壷」の仕覆に「藤種緞子」
など他たくさんあります。
香合では利休所持「利休形溢梅蒔絵香合」が有名です。
1月9日(月)宗家の正月
ご機嫌よろしゅうございます。
宗家の正月三ヶ日は多くのお客様がご挨拶に見えられます。
元旦は歌舞伎役者が顔を見せ、
二日には遠州流職方・向栄会の会員が集まり、御家元に御挨拶し、
お屠蘇を一同で頂き、その後、茶席に移動してお茶を頂きました。
お茶を頂いた後は、直入舎において祝膳を頂くのが恒例となっています。
広間対酌亭は今年の御題「野」にちなんだ道具組
掛物は、遠州公が沢庵に当てた手紙
花入は御家元が竹林でお探しになり作られた青竹
香合も野をイメージさせる深緑の瓢箪形に鳳凰の絵
他詳しくは点初めをお楽しみに。
さて、明日から正月恒例の行事
「稽古照今 点初め」が6日間に渡って行われます。
宗家では、お家元御家族をはじめ、遠州流茶道門人
総出で皆様をお迎えする準備の真っ最中です。
皆様当日楽しみにお越しくださいませ。
1月 2日(月)新年のご挨拶
皆様明けましておめでとうございます。
本年も茶の湯を通じて心を豊かに
更なる精進を致して参ります。
本年は酉年
酉は鶏のことを指します。
十二支を決めるために神様の御殿に向かっていた際、
猿と犬が喧嘩しながら向かっていました。
間に鶏が仲介に入り、何とか御殿までたどり着きました。
その為、猿と犬に挟まれているのだそうです。
またそこから『犬猿の仲』という言葉が生まれました。
さて、鶏にちなんだ道具としては
南宋時代末期の蘿窓(らそう)画「竹鶏図」が有名です。
日本でも馴染みのある動物で古くから画題として
多く取り上げられてきました。
他に、遠州公所持で鶏をかたどった
「宋胡録鶏香炉」
また祥瑞の茶碗や水指には「家鶏図」が描かれているものも数多くあります。
遠州公のお好みとして、
鳥差瓢箪や瑠璃雀の香合など鳥にちなんだものが知られています。
12月 26日(月)干支のお道具
ご機嫌よろしゅうございます。
今年も残すところあと5日となりました。
年越しの茶の湯にはその年の干支の道具を
登場させて、一年を振り返ります。
本日は申にちなんだお道具をご紹介致します。
遠州公命銘の「猿若」については以前ご紹介しましたので
ご参照ください。( 21014年 11月29日)
もう一つ、
猿の形をした茶入に「不聞猿」があります。
名物瀬戸後窯。上部のくびれた瓢形で、「不見猿・不言猿・不聞猿」
の三猿のうち、耳を塞ぐ不聞猿に姿が似ていることから
つけられました。
全体的に黒飴釉の中に光沢のある黄釉が掛かっています。
また土見の底が高台の様に立ち上がっているのも特徴的です。
根津美術館、香雪美術館などに同手の茶入が存在します。
12月 5日(月)宗家道場の床の間拝見
ご機嫌よろしゅうございます。
いよいよ師走。慌ただしい日々の中にも閑かなひと時を
今年という一年を振り返りながら
お茶をいただきます。
床 不傳庵宗実家元筆 寸陰一尺璧
花 加茂本阿弥椿 蝋梅
花入 信楽
床の間の掛け物「寸陰一尺璧」の
「寸陰」とは、ほんの少しの時間、「尺璧」とは、直径一尺もある大きな宝玉の事です。
中国・前漢時代の哲学書『淮南子』にある「聖人は尺璧を貴ばずして寸陰を重んず」
を表した言葉として知られています。
年末にあたり、時間の大切さを述べた言葉です。