清水

2017-7-17 UP

7月 17日 (月)清水

みちのべに清水ながるる柳かげ

しばしとてこそ立ちとまりけれ

ご機嫌よろしゅうございます。

ようやく梅雨が明けたかと思うと、

今度は暑さがこたえるようになりますが

歌人・西行も青空の広がる夏の日に、柳の木陰で

一休み、あまりに心地よくて長居してしまったようです。

観世小次郎信光が作った謡曲『遊行柳』にもこの

歌が登場し、那須の芦野にある柳は観光地として

一躍脚光を浴びるようになりました

「奥の細道」遊行柳の段では、この歌は西行が

二度の奥州歴訪(1144年頃と 1186年の二回)の

どちらかで詠んだものであるとして、実際にこの芦野に

訪れた芭蕉は「清水流るる柳」を見たいという願いが

今こそかなったと感動し、

田一枚 植ゑて立ち去る 柳かな

と詠んでいます。

この西行の歌から遠州公によって銘がつけられた茶入に

「清水」があります。

真中古 柳藤四郎手の本歌であるこの茶入の挽家には遠州公が

金字で書付けされています。

やや青味を帯びた白色土に、口は浅めの捻返し

黄茶色釉に濃墨色の釉が掛かっています。

茶の湯にみる文様「雲」

2017-7-14 UP

ご機嫌よろしゅうございます。
長く鬱陶しい梅雨の季節
カラッと晴れた青い空を覆い隠す雲が、時折
恨めしくなりますが、今日はそんな雲の文様の
お話でもしながら、気を晴らすことに致しましょう。
雲文は中国では古くから陰陽の気の現れとして尊ばれ、
神仙術や道教、仏教などの荘厳用に様式化され、吉祥文
として扱われます。
同じく吉祥文様の龍文、鳳凰文、鶴文や、宝尽し文と
取り合わせることが多く、雲単体は少ないようです。
有名なものには夢窓疎石の袈裟とも伝わる「嵯峨金襴」
勘合貿易で運ばれた嵯峨金襴の類文の裂「富田金襴」
遠州公の道号であり、春屋円鑑国師筆「大有号」の表装では
中廻しに雲を単体で五の目に配した「白茶地地雲文緞子」が
使われています。
他様々な道具や裂地に雲の姿を見ることができます。
また、「雲堂手」と呼ばれる文様は渦巻状の雲形と楼閣が
染付によって描かれたもので、「紀三井寺」とよばれる
茶碗はその代表的なものです。

もとは香炉であったものを利休が茶碗に転用したといわれています。
名前の由来は諸説ありますが、『茶器名物図彙』では遠州公が
染付に描かれた人物を観音に見立て、観音霊場として有名な
紀州・紀三井寺から名をつけたと説明しています。

今月の和菓子「天の川」

2017-7-14 UP

ご機嫌よろしゅうございます。
夏の季節には、和菓子も寒天や錦玉などを用いた
涼しげでさっぱりとしたお菓子が作られます。
無題

今月のお菓子は「天の川」
七夕にちなんで作られたものです。
錦玉羹に羊羹を流し合わせ、道明寺と金箔で
夜空にきらめく天の川の星空を表しています。

お稽古でお客様にお出しする際には、
直前まで保冷剤で優しく冷やしておいて、
水を打った木地の銘々皿に青葉を敷いています。
せっかく冷やしていたお菓子ですので、
お早めにとお勧めして召し上がっていただきます

醒酔笑 5

2017-7-7 UP

 ご機嫌よろしゅうございます。
先月まで「醒睡笑」の中から茶の湯にちなんだお話を
ご紹介してまいりました。
策伝が、茶を織部に学び、遠州公との交流深い人物であったことは
先日お話いたしました。
浄土宗西山派誓願寺55世法主となった後、元和9年70歳で
塔頭竹林院隠棲、織田有楽・千道安の一字を合わせて
「安楽庵」と号しました。
茶器、書籍を多く所持していたことが「安楽庵名物帳」でわかります。
茶の湯では裂地においても安楽庵裂の名で馴染みがあります。
安楽庵裂とは一重蔓あるいは二重蔓の唐草の間に牡丹の花を
配したものや宝尽し紋のものが多く見られます。
『古今名物類聚』には、安楽庵として紺金地木瓜雨龍紋、
柿色金地一重蔓大牡丹、浅黄色金地木瓜折枝紋、浅黄金地雲龍紋、
萌黄地瓦燈竜紋などを載せています。
文様や種類は雑多で統一的な特色はなく、
一般に17世紀初頭の近渡りと、それ以後の今渡りものが
多いといわれています。

茶の湯にみる文様「鳳凰」

2017-7-7 UP

ご機嫌よろしゅうございます。
先週は鳳凰の棲む桐についてご紹介しました。

明の李時珍の著で本草書である「本草網目」には
鳳凰の姿を「前は鴻、後は麟、頷は燕‥」といった
様々な生物の複合体であり、天下が治るとき
その姿を現し、梧桐でなければ棲まず、竹の実でなければ
食べず、醴泉の水でなけれな飲まないと記しています。
先週ご紹介しました通り、この梧桐とは日本のアオギリの
ことを指し、中国から鳳凰の伝承が伝わった際に、
この二つが混同されてしまったことから日本の装飾文様の
多くではやむをえず梧桐に棲んでいる鳳凰です。

茶の湯の道具には砧青磁の花入で国宝「万声」、近衛家伝来の
重要文化財「千声」に代表される「青磁鳳凰耳花瓶」
が思い浮かびます。
遠州公が所持した中興名物「玳玻鸞天目茶碗」には、
向かい合う鳳凰が蝶の様な文様と共に描かれています。
裂に見る鳳凰は細かく見ると3種類ほどありますが、一括りに
「鳳凰」と呼んでいます。
昨年、能「二人静」に因んでご紹介しました「二人静金襴」
には、一対の鳳凰が向かい合わせに円形に描かれています。
また、分銅つなぎの地紋に鳳凰二羽の丸紋、宝尽しが配された
「白極緞子」は、足利義政の寵愛を受けた鼓の名手
である白極太夫が義政より賜り、鼓の袋にしたと伝わっており、
緞子の中でも特に古い裂の一つです。

今月の菓子「初ほたる」

2017-7-7 UP

hotaru

ご機嫌よろしゅうございます。
今月のお菓子は「銘・初ほたる」源太萬永堂製です。
日の暮れた沢辺、ほのかな光を放ちながら舞い飛ぶ幽玄な
夏の夜を表現したお菓子です。

夕されば蛍よりけに燃ゆれども
光りみねばやひとのつれなき 紀友則

葛に包まれた夕闇とやわらかな光が、
甘みとなって口の中に広がります。

宗家道場の床の間拝見

2017-7-7 UP

ご機嫌よろしゅうございます。
燕が日本を訪れる季節。
よく「燕が低く飛ぶと雨が降る」といわれます。
これは燕のエサとなる小さい羽のある虫は、
低気圧が近づき空気中の湿度が高くなると、
湿気が羽について体全体が重くなり
高く飛ぶことがむずかしくなって低いところを飛ぶために、
それを追うツバメも低く飛ぶようになるのです。
雨中飛燕

茶の湯にみる文様

2017-7-7 UP

ご機嫌よろしゅうございます。

6月 5日は二十四節気の「芒種」
田植えの時期がやってきました。
そして5日から10日までの七十二侯は
「蟷螂生ず」
「蟷螂」とは「かまきり」のことを表します。
蟷螂は作物を荒らす虫を補食する益虫であり、
稲作が生活の中心となる弥生時代の銅鐸の文様にも
描かれています。
中国の故事に多く登場する蟷螂
『荘子』の「人間篇」には
蝉を狙う蟷螂、その蟷螂を狙う鵲、そしてその鵲を
とろうとする荘周。
己の利しかみえず危険に気づかない自分を恥じ、
弓を落としたという話があります。
また『淮南子』の「人間訓」や『韓詩外伝』には
斉の荘公の乗る車に対し、果敢にもその斧を振り上げる
蟷螂の姿に、人間であれば必ずその名を天下に
轟かせたであろうと、その蟷螂をさけて車を通ったという
話も。退くことを知らず、前に進むのみの蟷螂の姿から
弱い者が、自分の能力をわきまえず、強い者に
立ち向かうことを表した四字熟語として「蟷螂の斧」
と言いますが非力な者でも、ときによっては強敵に
身を捨てて立ち向かわなねばならない時がある
という意味で肯定的にも使われます。
この故事にになんで車軸釜の鐶付には、蟷螂の鐶付が
ついているものもあります。
また、東京国立博物館所蔵の「色絵 月に蟷螂文茶碗」
は、江戸時代の永楽保全作で、こちらに向って
草につかまり、鎌を振り上げる蟷螂は愛らしくもあります。

梅雨入と入梅

2017-7-7 UP

梅雨入と入梅

ご機嫌よろしゅうございます。
爽やかな5月もそろそろ終わりを迎え、
6月にはいると梅雨の季節を迎えます。
昔は「入梅」は立春から数えて135目とされていましたが、
現在では太陽の黄経が80度に達した日で、
芒種から数えて5日目頃の最初の壬(みずのえ)の日を
「入梅」と呼ぶようになりました。
これは、壬が陰陽五行で最も水の気の強い性格を
もつことからだとか。
ちなみに今年の入梅は6月11日です。
またこれとは別に「梅雨入り」は実際に梅雨の期間に
入ることを指す気象用語で、日にちは毎年異なります。
この頃は大雨による被害が起きやすい時期であることから、
天候経過と1週間先を見越して、気象庁が「梅雨入り」と
「梅雨明け」を発表するのだそうです。

今月の和菓子「薫風」

2017-5-22 UP

kkkk

ご機嫌よろしゅうございます。
爽やかな青空の下、木々の緑は目にも鮮やかになりました。
そんな風に吹かれるみずみずしい楓の葉を表したお菓子を
ご紹介します。

目には青葉 山ほととぎす 初鰹 素堂
あらたうと 青葉若葉の日の光  芭蕉

源太さんに「こなし」と「練り切り」の違いについて
伺ってみました。「こなし」は米粉などででんぷんを入れて
蒸しており、もっちりとした食感に。
「練り切り」はあんこにつなぎをいれてさっくり、
ずっしりとした食感になるのだそうです。