2月 4日(水) 濃茶
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は濃茶点法についてのお話を
茶道には薄茶・濃茶とあり、一般的に現在は
抹茶といわれてだされるものは薄茶が多いですが
本来抹茶といえば、この濃茶を点てるのが
正式な姿で、茶の湯が出来た頃には、お茶といえばむしろ
この濃茶のみ
であったと思われます。
点法で「お茶を一服差し上げます」
という挨拶はこの濃茶を指すわけです。
薄茶の時とは異なり、一服のお茶が点つまでに
主客共に精神を張り詰めて、一挙手一投足に
集中し、釜の煮え音、茶を練る音、柄杓から湯の落ちる音
までもご馳走に楽しみます。
遠州流の濃茶でのお点法では、
お茶の香りが飛ぶのを避けるため
お茶を点てている途中で、お湯をくわえないこと
(2014年 11月 26日 参照)
茶入の巣蓋は景色として、お客様に見えるように
置くことが特徴的です。
また中水の後にはそれまで窓に掛けていた簾を
茶室外から、一気に巻き上げます。
明るい日差しが入ることにより、室内がパッとあかるくなり、
一服の茶に
集中していた緊張感が溶け、 開放感が生まれます。
1月28日 (水) 重茶碗(かさねちゃわん)
ご機嫌よろしゅうございます。
薄茶のお点法が一通りできるようになると
次に稽古するのが「重茶碗」です。
このお点法は遠州流茶道特有のものです。
お茶事の薄茶のとき、数人のお客様に
次々とお茶を点てていくための点法で
同じ種類の茶碗を重ねて使用します。
遠州公が伏見奉行屋敷で行った茶会の時は
薄茶の点法は遠州公の家臣がつとめ、
三島茶碗のような平茶碗を用いて
お客様の人数分重ね、何服も点てていました。
重ね茶碗はその形式を更に洗練したもので、
遠州公の切形(見本)に従って作られた茶碗
で現在もお稽古されています。
薄茶のお点法と異なるのは
茶巾・茶筅の仕組み方が茶碗手前になり、
茶筅は穂先を向こうへ出して根元を茶巾に
つけて入れます。
茶杓も重ねた茶碗の上では不安定なため
表を下に向けて茶碗右に乗せます。
茶碗の扱い方も通常と異なりますので
注意が必要です。
1月 21日 (水)薄茶(うすちゃ)
ご機嫌よろしゅうございます。
茶道に入門して最初に習うのは
お点法の基本となる薄茶です。
そして稽古が進むにつれ、濃茶や
難しい点法を習うようになり、
茶道を習い始めてしばらくすると、
初めに習った薄茶の点法に慣れ、
自分のくせが往々にして現れることがあります。
点法とは薄茶にありときくものを
粗相(そそう)におもう 人はあやまり
という言葉があります。
茶道の正式な形であるお茶事では
寄付(よりつき)→迎付(むかえつけ)→初入→
初炭→会席→中立→濃茶→後炭→薄茶
という流れの中、主客共に緊張感を
持って時が流れます。
全ての流れを終えるまでに約4時間。
その最後に当たる薄茶では、それまでの緊張も
溶け、リラックスした雰囲気の中で
薄茶をいただきます。
その日の話題も弾み、亭主はお客様とお話を
しながら薄茶を点てることになります。
お話ばかりに夢中になり、手元がおろそかになることや、
点法に夢中になっていてはお客様との話も
弾まない。
如何なる状況でも平常心で点法ができる
それが薄茶に必要な心といえるでしょう。
1月 14日(水)遠州流の点法
ご機嫌よろしゅうございます。
当時、遠州好みは綺麗さびとも称されるように
茶道具に限らず、建築や庭園、着物の柄など
その洗練された美しさで、当時の美意識の
お手本ともされていましたが、
遠州公のお点法も綺麗さびの一つです。
松屋会記と呼ばれる茶会記の中で
筆者の松屋久重が遠州公の茶会に
招かれた時の記録が残っています。
久重は炭の置き方、道具の様子などから
遠州公の動きまでを細かく描写しています。
その中で茶巾の扱い方を
成程ニキレイニテ
一ネチメワナノ所アキテ
イカニモダテ也
現代語訳
茶巾のさばき方がなるほどと思わせるように
綺麗で、一ねじふくらませて輪にあけたところ
が、いかにも伊達だった。
この綺麗という感覚は、寛永の時代に共通する
美意識でもあり、当時の公家の日記にも
しばしば「きれい」という言葉がみられます。
伊達という言葉も、当時の流行語で、
仙台伊達家の行列からくる言葉ともされますが、
すっくと目立つ姿、精気あふれる
艶やかな美しさを表現します。
江戸時代後期には
「綺麗キッパは遠江」
と歌われたように
遠州公は、この綺麗を好む寛永文化の美意識の
中心的存在であり、そのお点法も
綺麗さびを感じられる伊達で美しいお点法でした。
現在、遠州流茶道門人が稽古するお点法は
その遠州公の時代から形を大きく変えることなく
伝わっている、伊達で綺麗なお点法なのです。
来週からはその遠州流茶道のお点法を一つづつ
紹介してまいります。
1月7日 (水)結び柳と水仙
ご機嫌よろしゅうございます。
お正月の飾りとして入れられる結び柳
宗家では、お家元が水仙とともに
清々しい青竹に生けて合親亭に飾られます。
結び柳は、唐の張喬の詩に
離別河邊綰柳條(河辺に離れて柳条をわかぬ)
千山萬水玉人遙(千山万水玉人遥かなり)
とあり、昔の中国では大陸のため河を利用する
ことが多く、門出の際に送る者と送られる者が、
柳の枝を持ち、柳の枝と枝を結び合わせて
別れるという古い風習がありました。
輪にすることで、再び巡ってもとに帰ることを意味
するなど諸説あります。
この故事から、利休が送別の花として
「鶴一声」と呼ばれる有名な名物花入に
柳を結んで入れたのが茶席で柳を入れた
はじまりではないかと言われています。
お正月の柳はその年の門出を祝う飾りとして、床の隅から
長く垂れていけるものです。
そしてその根占めに入れられる水仙
昔から茶の湯の花として愛されてきた花で、
十一月からから新年にかけて、村田珠光や千利休
細川三斎などの茶人が多くいけており、
遠州公も水仙を特に好んで冬によく用いました。
次々に蕾をつけて花を咲かし、
またその清楚な美しさから
今でも新年に好んでいけられます。
1月 5日 (月) 薮入り(やぶいり)
ご機嫌よろしゅうございます。
新年も明けて5日目。
そろそろ仕事始めという方も多いかと思います。
その昔、お休みといえばお盆と正月の
1月16日と7月16日の2日だけ。
当時は今のように週末まで頑張れば…
というわけにはいかなかったようです。
この二日を「薮入り」と呼んでいました。
その理由はそれぞれの前日でもある1月15日と
7月15日にあります。
この両日は小正月とお盆と呼ばれる大切な祭日でありました。
そして奉公人や嫁入り先の用事を済ませた翌日は
実家の行事にも参加できるようにお休みが与えられた
といわれています。
仕事を習うために丁稚奉公にでた奉公人が
休みをとって実家に帰ることが出来る時期であり
また嫁に行った女性が実家に帰れる、
数少ない日でもありました。
この「藪入り」の習慣は現在のお盆と正月
の帰省という形で残っています。
今でも喜びが重なった時に、
「盆と正月がいっぺんにきたようだ」というほど、
この二つは日本人にとって貴重な日でした。
1月4日(月)1月のお話
ご機嫌よろしゅうございます。
正月三が日も過ぎ、年が改まった
実感と、徐々に通常の生活へと戻って
いく少し残念な気持ちが入り混じります。
さて、一月の異名の一つである「睦月」は、
人がむつびつくからであるとか、
一年の始まりであるから元つ月(もとつつき)である
などと言われています。
本来、正月もお盆もご先祖様の供養が
目的にあります。そのためお正月に
お墓参りに行かれるご家庭も多いと思います。
6日には、二十四節気の「小寒」を迎え、
寒さが最も厳しい時期に入ります。
いわゆる「寒の入り」で、この時期には
各地で寒稽古や寒中水泳などが行われます。
1月1日 (木) 元旦
皆様
新年あけましておめでとうございます
本年も遠州流茶道は稽古照今・温故知新の精神で
皆様と共に茶の湯の心を伝えてまいりたいと
思っております。
何卒よろしくお願い致します。
さてこのメールマガジン「綺麗さびの日々」
も二年目を迎えることが出来ました。
日頃のご愛読感謝致します。
本年は配信スタイルを月・水・金曜日に変更し
月曜には、四季を通じた便り
水曜には、遠州流のお点法について
金曜には、遠州ゆかりの地を巡って
というテーマを基本に
お送りさせていただきます。
土日には関連イベントの告知もその都度
お伝えしていく予定です。
遠州流門人の皆様にはもちろんのこと
他流でお茶を楽しまれている方や
お茶に興味のある方にも読んでいけいただける
ようなお話をしていきたいと考えておりますので
どうぞお楽しみに。
さて、今年の干支は乙未です。
羊は群れをなして行動するため、
家族の安泰や平和をもたらす縁起物とされているのだとか
今年一年が皆様にとって平和で穏やかな年と
なりますように。
12月 31日 除夜釜
ご機嫌よろしゅうございます。
いよいよ今年も今日で最後となりました。
宗家の大晦日は例年、除夜釜が行われ
今年一年締めくくりの茶となります。
寄付きでは24日にご紹介した出来立ての
柔らかい甘みの蕎麦がきが振舞われ、
小間・成趣庵ではお家元自らお客様に
濃茶を練ってもてなしてくださいます。
この炉中の火は、埋み火(うづみび)といって
年を越すまで火をつなぐため、炭に灰を
かけておきます。
そしてこの火を、年が改まった翌朝
初炭で釜を掛け直します。
遠州流茶道の宗家で代々守られてきた
暮れから正月の厳粛で、神秘的な行事です。
さて、このメールマガジンも今年元日より始まり、
毎日配信を続け、無事大晦日まで迎えることができました。
ご愛読ありがとうございます。
来年も引き続きまして、
皆様に更なる茶の湯の魅力、
遠州流茶道の魅力をお伝えしていければ
と思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
12月26日 御用納め(ごようおさめ)
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は今年最後のお仕事に向かわれている方も
多いのではないかと思います。
この日を「仕事納め」とか「御用納め」
などといい、官公庁では、
行政機関に関する法律により、
二十九日から一月三日を休日としていて
民間の企業もこれに準じでお休みとしている
ところが多いようです。
今年のように二十八日が日曜だと
二十六日の今日が御用納め。
今年一年
お仕事お疲れ様でした。
まだまだお仕事が続く方、
あともう少し頑張りましょう。