3月7日 (月)お稽古場の風景 「直入軒の床の間拝見」

2016-3-7 UP

3月7日 (月)

お稽古場の風景 「直入軒の床の間拝見」

ご機嫌よろしゅうございます。

3月5日は二十四節気の啓蟄でした。

土の中で春を待っていた生き物達が 眠りから覚める時期。

今日はそんな春の訪れを感じる 宗家稽古場の床の間を御紹介します。

床  紅心宗慶宗匠筆 花開天下春

花  玉手箱椿 梶の新芽

花入 古銅 福耳

掛け物の言葉「花開天下春」は 一輪の花が天下に春の訪れた事を知らしめ

花一輪の中に天下の春が凝縮していることを 表しています。

この考えを仏教では一多相入といいます。 また、「花開く」とは、心の花が 開く事、悟りの開ける事をも指します。
花開天下春

3月 4日(金) 能と茶の湯

2016-3-4 UP

3月 4日(金) 能と茶の湯
「竹生島」

ご機嫌よろしゅうございます。

今日は「竹生島」をご紹介します。
「竹生島」は神をシテとする脇能物で、
作者は不明とされています。

時は三月、琵琶湖湖畔には桜の花が咲き乱れ
穏やかな春の風景が広がります。
この琵琶湖に浮かぶ竹生島明神を訪れた
醍醐帝の朝臣が、女を伴った老翁に舟で
迎えられます。

老人は臣下を社に案内すると、
連れの女も一緒に来たので、臣下は老人に、
竹生島は女人禁制ではないのかと問います。
すると、竹生島は女体の弁才天を祀り、
女性をお隔てにならないと返し、
島の由来を臣下に語り聞かせます。
その後老翁と女は弁財天と竜神となり、
朝臣に金銀珠玉を授けます。

島の神社に祀られている弁財天、
そして琵琶湖の水の精ともいうべき
龍神の霊験を讚え、国家安穏を祈願する
祝言能で、謡いやすい曲として親しまれています。

2月 29日(月) 新介正次命日

2016-2-29 UP

2月 29日(月) 新介正次命日

ご機嫌よろしゅうございます。

きょうは2月29日、四年に一度の
閏年です。

そして今日は遠州公の父である、
新介正次のご命日でもあります。
正次の生きた戦国時代、主従の選択は
家の存続を左右する非常に厳しい時代でした。

新介正次は、天文九年(1540)
近江国小堀村に生まれます。
若い頃に出家していましたが、三十一歳頃までに
還俗し、浅井家家老の磯野丹波守員正の娘と結婚。
浅井家との関係も深まります。
しかし、姉川の合戦の後、員正が浅井家離反し
新介は再び僧籍へ。
長浜の新城主となった豊臣秀吉の弟・秀長のもとで
再び還俗し、次第に立身していきます。
秀長・秀吉と主を失って後には家康の下で働き
作事や、行政官としてもその能力を発揮します。

慶長八年(1603)二月十二日、伏見城にて
家康が征夷大将軍の宣旨を受けます。
その翌年の慶長九年 二月二十九日、江戸に出府
の途中、相模国藤沢にて六十五歳の生涯を閉じました。

冷静な判断によって時流を見極め、動乱の時代を
生き抜き遠州公を育成、後の小堀家の存続と、
徳川の譜代大名並みの扱いを受けるまでの
功績を残しました。

2月19日(金)能と茶の湯

2016-2-19 UP

2月19日(金)能と茶の湯
「芦屋(あしや)高砂釜」

ご機嫌よろしゅうございます。
今週は「高砂」にちなんだ釜を
ご紹介します。

現在五島美術館に収められている
芦屋の高砂釜は鴻池家伝来で、
同家にはもう一つ高砂地紋釜があり、
江戸時代中期には二つ揃えであった
といわれています。
一面に尉と姥を、
他面には竹林に鶴を配しています。
鐶付は亀です。そして、

我見ても久しくなりぬ住吉の
岸の姫松幾世経ぬらむ

この歌が尉と姥、竹林の模様の間に
鋳出されています。

「私が見てからも久しいこの住吉の姫松は
一体どれだけの御代を経たのであろう。」

この歌は高砂から住吉に移り、住吉明神が
現れて謡ます。
また「伊勢物語」や「古今集」にもこの歌が
みられます。

2月15日(月)想(おも)い葉

2016-2-15 UP

2月15日(月)想(おも)い葉

ご機嫌よろしゅうございます。

昨日2月14日はバレンタインデーでした。
バレンタインはもともと、西暦269年に
兵士の自由結婚禁止政策に反対した
バレンタイン司教が、ローマ皇帝の迫害によって
殉教した日を記念した祭日(2月14日)と
むすびつけられて出来たもので、
今では女性から男性にチョコレートを贈るという、
日本独自の習慣が生まれ人々に受け入れられています。

さて、そんな日にちなみまして
茶畑からこんなお話を。

茶葉の中で、二枚の葉がくっついたものを
「想い葉(おもいば)」と呼ぶのだそうです。
四つ葉のクローバーのように珍しいもので
これを見つけると恋の想いが、相手に伝わる
といわれているそうです。

茶摘みはかつて若い娘さんの仕事で、
新茶時期には茶農家に泊まりこみで働いたの
だそうです。
茶摘みをする娘さん達も、偶然見つけた想い葉に
心を躍らせていたのでしょうか。

2月8日(月)珠光茶会

2016-2-8 UP

2月8日(月)珠光茶会

ご機嫌よろしゅうございます。

今日2月8日から14日の7日間、
村田珠光(むらたしゅこう)のゆかりの地である奈良で、
「珠光茶会」が催されます。

奈良では、古より様々な文化が育まれてきました。
そのうちの一つである「茶の湯」を通して
奈良の魅力を発信することを目的に行われる
このイベントは今年で三回目となります。

遠州流茶道は第1回から参加し、
お家元も第1回目は来賓として招かれ、
昨年は元興寺でお献茶をご奉仕されています。

奈良市内の世界遺産を含む八社寺や、
歴史的な街並みが残る「ならまち」のお茶室を
舞台に、今年は七流派(遠州流茶道、表千家、裏千家、
武者小路千家、石州流、藪内流、宗徧流)が一堂に会し、
普段からお茶に親しんでいる方だけでなく
お茶に馴染みのない方、観光客の方にも
楽しんでいただける茶会になっています。

遠州流は2月11日(木)に薬師寺まほろば会館にて掛釜
また14日(日)には水之江 福智院店にて、
初心者に向けた講座「扇子の使い方と薄茶席」の
体験を行います。

2016-2-1 UP

2月1日(月) 向栄亭の床の間拝見

 

ご機嫌よろしゅうございます。

今日から二月、そして二月の四日は 立春です。

寒さは依然として厳しいですが そろそろ春の気配を感じられる頃になりました。

さて、今日は二月の宗家稽古場の床の間をご紹介します。

床  紅心宗慶宗匠筆 柳緑花紅(やなぎはみどり はなはくれない)

花  加茂本阿弥椿 木五倍子(かもほんなみつばき きぶし)

花入 志戸呂 鶴首

床の間の掛け物の言葉は 中国北宋時代の政治家であり詩人である

蘇東坡(そとうば)の「花紅柳緑真面目」 花は紅(くれない)柳は緑(みどり) 真面目(しんめんもく)

という言葉に由来するものです。

花は紅、柳は緑、このあたりまえのことが、

とりもなおさず真理の実相である

自然のあらゆるものがそのままで 真実を具現しているといっています

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1月 22日(金)能と茶の湯

2016-1-22 UP

1月 22日(金)能と茶の湯
「利休と能」

ご機嫌よろしゅうございます。

侘び茶の大成者である千利休は、
大変能が好きで、勧進能といわれる
能の興行ごとに足を運び、宮王道三・三郎
兄弟の能楽師の楽屋をときおり訪ねていた
といいます。
また、この三郎には宗恩という妻がおり、
利休の様々な質問にも明朗な回答をする
聡明な女性でした。

利休は謡曲をこの兄の道三に学び、道三は
利休に茶を学ぶ大変親しい間柄であったことも
あってか、
天正九年(1581)に利休の先妻が
亡くなった翌年、三郎を亡くしていた宗恩と
利休は道三を親がわりとして結婚しています。

また利休には実子道安がいますが、
三郎と宗恩との間にできた息子道安と同い年の
少庵を養子とします。
この少庵が千家第二代であり、三代目は
少庵と利休の娘お亀との間に生まれた宗旦です。

この宗旦と遠州公は同い年になります。

1月18日(月)お稽古場の風景

2016-1-18 UP

1月18日(月)お稽古場の風景

ご機嫌よろしゅうございます。
今年の点初めも無事に皆様をお迎えし
宗家道場では本年初の稽古が始まりました。

床の間を拝見し、お稽古の支度
新年を寿ぐ清々しい道具組に
気持ちも自然と引き締しまります。

そんな宗家道場の稽古場の様子をお伝えします。

床  紅心宗慶宗匠筆 千年丹頂鶴
花  曙椿 白梅
花入 青磁 鳳凰耳

掛け物の「千年丹頂鶴」は「万年緑毛亀」
(まんねんりょくもうのかめ)
と対句になります。
「鶴は千年、亀は万年」という言葉も
ありますように、鶴と亀は共に長寿と福寿を
象徴するものです。
新年や慶事の際に掛けられる、
祝慶を尽くした語です。
千年丹長鶴

1月 15日(金)茶の湯と伝統芸能

2016-1-15 UP

1月 15日(金)茶の湯と伝統芸能
「能について」

ご機嫌よろしゅうございます。
今日は能と茶の湯についてのお話を
して行きたいと思います。

庶民の芸能から昇華され、室町時代には
足利将軍家の力を得て社会的地位を獲得した能

そして、同じく室町時代に侘び茶が大成し
権力者の支持を得て発展した茶の湯
江戸時代には、能・茶の湯共に武家社会の
嗜みとしての地位を確立していった歴史があります。

またその精神性においても
村田珠光の言葉に「月も雲間のなきは嫌にて候」
とあるのを、室町後期の能役者・金春禅鳳が
「珠光の物語とて、月も雲間のなきは嫌にて候。
これ面白く候」
と語っているように
茶の湯の「侘び」と能の「幽玄」の世界には
相通ずる点が多くあります。

そういった面からも茶の湯の道具には、
能に由来する銘が多く見受けられるのです。

能の銘がつけられることによって、
一つ一つの能の世界が茶の湯に広がります。