7月14日 夏は夜
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は枕草子の一節をご紹介します。
夏は夜
月の頃はさらなり
闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし
雨など降るもをかし
月明かりにほのかに光る蛍
そして、突然の夕立
どれも夏の夜にふさわしい、美しい情景です。
「をかし」は趣がある、風情があるといった意味。
日常の風景の中に風情を見つけ、それを巧みな表現力
で表した「枕草子」は「をかし」の文学とも言われます。
特にこの「春は曙…」から始まる四季の一節は
原文で読んでも、確かにその美しさに共感できる
日本人の美しいものに対する感性は、現代に通づるものだと
実感できます。
これが千年以上前に書かれたものであるから驚きです。
7月 3日 山開き
ご機嫌よろしゅうございます。
例年7月1日には富士山の山開きがされ、
登山愛好者の待ちに待った登山の解禁となります。
昨年、世界文化遺産認定で話題となりました富士山ですが
かつてはそれ自体が御神体であり、多くの行者が修行する
信仰の山でした。
江戸時代には富士講と呼ばれる信仰が庶民にまで広がり
参拝登山するようになりました。
白装束に身を包み、「六根清浄」と唱えながら登ります。
その山開きが
残雪などを理由に
今年から山梨側、静岡側の登山ルートで開山期間が異なり、
静岡側が7月10日からとなることが決まったそうです。
同じ山なのに登る場所によって
山開きの日が異なるとは
なんだが不思議な気がしませんか?
7月1日 文月(ふみつき)
ご機嫌よろしゅうございます。
今日から7月。
旧暦7月の異称である文月は、
七夕に短冊に詩歌や文字(文字上達を願って)を書いて
笹につけて飾る風習があるから「文披月(ふみひらきづき)」
七夕の夜に書物を夜風に当てる風習ので「文の月」
となったとか
稲穂の実が熟し始める「穂含月(ほふみつき)」
からとも言われています。
梅雨があけると夏もいよいよ本番です。
着物も絽や紗といった薄物になり
軒先に
風鈴を吊るして、耳で涼しさを感じたり、
日本では暑さをしのぐ工夫が
昔から行われてきました。
四季の移り変わりを感じる余裕も
なくなっていることの多い近年ですが、
そういった夏の設えをどこかでふと目にした時、
その風情に、日本らしさを感じ、豊かな気持ちになるのは
やはり、日本人が古くから培ってきた
特有の感性を忘れず持っているからではないかと思います
6月 25日 南風(みなみはえ)
ご機嫌よろしゅうございます。
梅雨明けが待ち遠しい今日この頃です。
この季節吹く風を南風とよんでいます。
太平洋上で発達した高気圧から吹き寄せる季節風
をいい、大漁を約束するといわれる南風。
漁師たちはこの風を心待ちに、海を見つめます。
もともと漁師言葉であったようですが、
俳句の季語にもなっていて
梅雨の黒雲の下で吹く風を黒南風(くろはえ)
梅雨明けの頃吹く南風を、白南風(しろはえ)と言います。
白い風が空に流れて夏の訪れを告げます。
梅雨に入る黒、梅雨が明け盛夏へ向う白と、
同じ南風を明快に言い分け、
季節の変化を感じさせてくれる季語の一つです。
6月 21日 夏至(げし)
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は夏至にあたります。
一年のうちで最も昼間の時間が長くなるのが
夏至です。
この日に関西ではタコ、関東では焼き餅を食べる地域も
あり、地域性が表れます。
北欧では白夜が有名ですが日照時間が短いので、
昼間の最も長い夏至は、とても大切な日とされ
様々な国で夏至祭が催されたり、
国中が週末お休みになる国もあるようです。
日本でも近年ではこの夏至の日に
環境に対する取り組みという観点から
短い夜をキャンドルの灯だけですごそうといった
イベントも行われています。
6月 15日 父の日
ご機嫌よろしゅうございます。
父の日を提唱したのは、アメリカのジョンブルース・ドット夫人。
彼女の父は南北戦争で軍人として働き、復員してまもなく過労により妻を亡くし
その後は男手一つで6人の子供を育て上げます。
母の日同様、父の日もあるべきとして夫人が『牧師協会』へ嘆願し
その後1916年に『父の日』が認知されるようになりました。
アメリカで正式に祝日となったのは1972年
日本では1950年ころに広がり始め、
1980年頃には定着していきました。
『父親を尊敬し、称え祝う日』が「父の日」です。
近年日本では日本ファーザーズ・デイ委員会という組織が
毎年ベスト・ファーザー賞を発表しています。
選考基準は
・ 明るく楽しい家庭づくりをしている父親
・ 父親学の実践者
・ 子供たちの良き理解者、良き教育者
・ 社会の福祉に貢献し素敵な父親像をアピールしている人
などがあり、さまざまな意味で「素敵なお父さん」
と呼べる人を選び表彰するという趣旨のものです。
映画「父は家元」で垣間見えるお父様としての愛情
また、茶道を通じて次世代を担う子供達に優しく語りかける
宗実家元は、まさしく
「ベストファーザー」だと思う筆者でありました。
6月9日 五月雨(さみだれ)を…
五月雨を集めてはやし最上川
ご機嫌よろしゅうございます。
この俳句は江戸時代の俳人松尾芭蕉の有名な句です。
この句が詠まれたのは、元禄二年(1689年)に
最上川を訪れた時のことです。
この川は日本三大急流の一つにもあげられる
大変大きな河川です
初め船着場の家で行った句会で
「五月雨をあつめてすずし最上川」
と詠みました。
最上川から吹く心地よい風が、暑さを和らげてくれた
その情景を詠んだ句ですが、
その数日後、最上川を船で下ったとき、
「水みなぎつて舟あやうし」といった激しい川の流れ
であったので、「すずし」を「はやし」
とかえたのだそうです。
梅雨の一雫がやがて大河となる
その濁流に危険を感じながらも川舟で下る芭蕉が感じた
大自然の力と美しさが伝わります。
6月1日 水無月(みなづき)
ご機嫌よろしゅうございます。
今日から6月
今年も折り返しとなります。
旧暦でいう6月は梅雨も明け、暑さも厳しくなる時期
です。雨が降らないので「水が無い月」と言われたなど、
水無月という名前の由来には諸説あります。
6月に入ると、着物は単衣(ひとえ)と呼ばれる
裏地のない着物に衣替えします。
遠州流では袱紗の生地が絽に変わります。
こちらもお家元が毎年好まれて作られており、
腰につけるととても涼しげで、
お道具を清める手元まで、季節感を感じさせてくれます。
お茶会などでご覧になった方にもお声をかけていただきます。
綺麗さびの美意識ならではの
細やかな心配りです。
5月 29日 五月晴(さつきばれ)
ご機嫌よろしゅうございます。
気候も穏やかな新緑の季節、
爽やかに晴れ渡ったこの空のことを
「五月晴」と表現します。
しかしこの「五月晴(さつきばれ)」という言葉
本来は旧暦の5月を指しました。
梅雨の間の晴れの日に使われていましたが、
現在では五月の晴天という意味でも使われるようになったのです。
三寒四温同様、
誤用が一般化して定着した一例といえます。
5月28日 虎が雨
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は5月28日
この日は必ず雨が降るという伝承があります。
建久四年(1993)
仇討ちで有名な曽我兄弟が父の仇討ちに敗れて討ち死にし、
兄祐成の愛人、虎御前が悲しみに涙した日なのだそうです。
その後虎御前は兄弟を弔うため出家します。
旧暦では梅雨に当たるため、
江戸時代には俳句の季語でした。
また神奈川県小田原市城前寺では
仇討ちが行われたこの日
「曽我の傘焼き」と 呼ばれるお祭りがあります。
富士の裾野で傘を焼いて松明とした故事にちなむ祭りで
周辺をまわって古い傘を集め、火を放って供養します。
さて今年は虎御前の雨が降りますでしょうか?