3月 16日 朧月(おぼろづき)
ご機嫌よろしゅうございます。
うららかな春の季節。
夜にはぼんやり霞んだ夜空に月がでると
なんとも言えない柔らかい月明かりに
思わず見入ってしまいます。
この時期の月を朧月と呼びます。
菜の花畠に入日薄れ
見わたす山の端(は)霞ふかし
春風そよふく 空を見れば
夕月かかりて にほひ淡し
里わの火影(ほかげ)も森の色も
田中の小路をたどる人も
蛙(かはづ)のなくねもかねの音も
さながら霞める朧月夜
高野辰之作詞のこの歌は、幼い頃習った方も
多いかとおもいます。
日本気象協会では一般の応募から意見を募り、
有識者が「季節のことば36選」を選定
し、3月の言葉として、この朧月が選ばれています。
朧(おぼろ)という日本ならではの繊細な言葉の響き
そして、その言葉にピタッとはまる美しい情景です。
1月9日 (金)平成27年度 遠州茶道宗家 稽古照今
点初め(たてぞめ)
ご機嫌よろしゅうございます。
いよいよお茶の新年の行事
点初めが始まります。
例年大勢のお客様、門人で賑わうこの点初め
一服の茶と共に、同座する皆様と
その心を通わせる
皆様に新しい年を迎えた喜びを感じていただ
けるよう宗家及び門人一同精一杯のおもてなしで
皆様をお迎えしています。
さて、お家元に点初めに向けて一言頂きました。
「昨年は映画『父は家元』を皮切りに、
茶道テディベアなど、様々な分野との交流を持ち
遠州流茶道の幅を広げてきました。
今年はそれに満足せず、更に新しい事に
挑戦する姿勢を持ちたいと思います。
その心構えを点初めの掛け物で表したいと
思っています。
その一方御題の「本」に基づき、
茶の湯本来の源を探究してゆきたいと思っております。」
点初めにお越しになる皆様
是非お家元のお話に注目して新年初の
お茶をお楽しみ下さい。【
12月 15日 歳の市(としのいち)
ご機嫌よろしゅうございます。
いよいよ今年も数えるほどとなりますと
「歳の市」が開かれる頃です。
正月用品や縁起物の他、陶器や乾物、古着など
様々なものが店先に並びます。
昔は今のように便利ではなく、日々物品の
売り買いがされていたわけではありませんでした。
そんな中庶民はこの歳の市で、次の年の
暮らしに必要なものを買い揃えていた地域が
多いのだそうです。
江戸時代から有名な場所としては
浅草の浅草寺、埼玉県の氷川神社、
川崎の平間寺や鎌倉のハ幡宮
などがありました。
最近ではアメヤ横丁などの、年末叩き売りの
風景がテレビで中継され、大勢のお客さんで
賑わっている様子が恒例となっていますが
これも「歳の市」のひとつです。
11月 6日 口切(くちきり)
ご機嫌よろしゅうございます。
、
11月が茶の湯にとって大切な月である
ことの理由のもう一つが口切(くちきり)
にあります。
その年の八十八夜に摘まれた茶葉を詰めた
茶壷の口を切る時がいよいよやってきます。
他流派の口切の茶事ではお客様の前では
封印を手前から切り、壺の蓋を開け、向こう側に
落ちないように紙一枚のところで繋げて残す作法があるようですが、
武家である遠州流では、
その姿を嫌い、お客様の前では致しません。
この口切と炉開き
この二つの行事があって、11月は
一番正式な時期といわれているわけです。
9月 20日 彼岸(ひがん)の入り
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は彼岸の入りです。
今日から中日の秋分の日をはさんで
26日までが秋の彼岸となります。
お彼岸には春と秋があり、
お彼岸については春のお彼岸の日にもふれましたが
仏教では、生死の海を渡り到達する悟りの世界を
「彼岸」といい、その反対側の迷いや煩悩に満ちた世界
(私たちがいる世界)を「此岸(しがん)」
と呼んでいます。
彼岸は西にあり、太陽が真東から昇って真西に沈む
秋分と春分は、彼岸と此岸がもっとも通じやすくなると
考えられています。
お彼岸にご先祖供養をするのはこのためです。
暑さ寒さも彼岸まで
近年の異常とも思える記録的な暑さも
ようやく落ち着いてくる頃でしょうか。
9月 17日 秋の七草
ご機嫌よろしゅうございます。
春には春の七草と言って、七草粥をいただく
ことからも、その七草の種類をご存知の
方は多いことと思います。
同様に秋にも七草と言われるものがあり、
こちらは食べられませんが
山上憶良が万葉集の歌で詠ったことで有名です。
秋の野に
咲きたる花を指折り
かき数ふれば
七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花 葛花 撫子の花
女郎花(おみなえし) また藤袴
朝貌(あさがお)の花
尾花はススキ
朝顔は当時まだ日本にありませんので桔梗の
ことをさすようです。
9月9日 重陽の節句
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は9月9日 重陽の節句です。
現在ではあまり馴染みが薄いかもしれませんが
端午、七夕などと同じ五節句のうちの一つです。
古来中国では陰陽の考えから奇数を陽とし
その奇数が重なる日を節句としてお祝いしていました。
そして奇数のうちで最も大きい奇数である9が重なる
9月9日は大変おめでたいとされ、
菊を浮かべた酒を飲んだり
被綿(きせわた)といって、真綿で菊を包み、菊の露や香りの移った
その綿で肌をぬらすなどして長寿を祝いました。
「枕草子」にも
菊の露もこちたく
覆いたる綿などもいたれ濡れ、
うつしの香ももてはやされて…
と着せ綿の様子が記されています。
宗家の稽古場でも、この日には
ご先代が大和絵をもとに再現した着せ綿
をお家元が床の間に飾られます。
7月7日 七夕(たなばた)
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は七夕
五節句のうちの一つです。
この夜、天の川を隔てて暮らす牽牛(けんぎゅう)と織女が、
一年で一度だけ会える日とされています。
この伝承は奈良時代に中国に伝わり、
平安時代には供え物を庭に並べ、裁縫や管弦などの上達を願いました。
七夕は、この牽牛・織女星の伝説と、
そこから発達した乞巧奠(きっこうでん)の行事に、
日本古来の「棚機つ女(たなばたつめ)」の信仰が
混ざり合って形成されたものです。
このたなばたつめは機で織った布を神におさめ、
病気や災厄が起こらないように、そして裁縫の手が上達するよう
願ったとされていて
もともと7月7日の夕方を表して七夕(しちせき)
と呼ばれていましたが、
この「棚機つ女」がもとになり「たなばた」と
呼ばれるようになりました。
例年曇りがちで、なかなか空がすっきり見られないのが
悩ましいところです。
さて、本来この七夕は旧暦の7月7日でないと星座が違ってしまいます。
従って、残念ながら実際の所
二人が会えることは極めて稀ということになります。
6月6日 芒種(ぼうしゅ)
ご機嫌よろしゅうございます。
今日は24節気の芒種にあたります。
小満から数えて15日目頃になります。
稲や麦のような芒(のぎ)のある穀物穂の出る穀物の
種をまく季節ということから、芒種と言われています。
実際にはもう少し早く種を撒くようです。
芒は、イネ科の植物の花についている針のような突起のことで
禾とも書きます。
天目茶碗には禾目とよばれるものがあり、
茶色や銀色の細かい縦筋が無数に見られます
これを日本では穂先の禾に見立て、
この種の釉薬がかかった天目茶碗を禾目天目と呼んでいます。
5月 6日 幟(のぼり)
ご機嫌よろしゅうございます。
GWも今日で最終日。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。
今日は幟について
幟はもともと神様の依代(よりしろ)の役割があったそうで、
これに鯉の絵を書いたのが鯉幟の起源だそうです。
また、中世以降、武家では男児の出生を祝って、
端午の節句に旗指物(家紋をしるしした旗)や幟を立てる風習があり、
江戸時代には特にこの行事が重んじられていて、
武家の玄関先には武具や旗指物や幟が並べられました。
経済面で力をつけた商人が
これに対抗して、旗指物のかわりに「鯉のぼり」
を考案したという説があります。
この鯉幟は、滝を登りきった鯉が、
龍に変身するという故事にちなんだもので
男の子の出世を願う縁起物
現在では鎧飾りと共に端午の節句に欠かせない飾りです。
例年ご宗家の玄関では
正大さんの真鯉、緋鯉の三尾が堂々と上空を泳ぎ
お客様をお出迎えしてくれます。