東海道旅日記「下りの記」その手は桑名の…

2021-7-16 UP

三重県桑名といえば、蛤の名産地です。

揖斐(いび)川、長良川、木曽川が伊勢湾に流れ込み、

川の水と伊勢湾の水が混じり合って

栄養豊富な水域となるため、

濃厚な旨味を持つ美味しい蛤が育ちます。

かつては殻付きの枯れた松葉や松笠を燃やしながら、

蛤を焼いたようです。

この焼き蛤は名物として、

伊勢参りに訪れた人々から全国にその名が

知れ渡ったと言われています。

この桑名の地名と蛤を合わせて

「その手は桑名の焼き蛤」

という洒落言葉が、江戸時代には

すでに使われていました。

やじさんきたさんの珍道中『東海道中膝栗毛』

のなかでも、二人が桑名でこの焼き蛤を肴に

酒を楽しんでいる様子が描かれています。

ちなみに、蛤の旬は春先のようですが、

桑名のはまぐりの旬は初夏から夏場の8月頃にかけて、

今がちょうど美味しい時期です。

東海道旅日記「下りの記」 10月10日 訳文

2021-7-2 UP

十日 暁の頃に出発し、桑名の里に着く。
城主(松平定綱)の出迎えを受けて、
しばらく休息し、語らう。
船着場から船頭の声がして
「潮が満ちた!追い風だ!」
というのを聞いて、申の上刻(17時前頃)、
城主に大急ぎで暇乞いをして船に乗る。
順風に帆を引き、船のゆく事
飛ぶ鳥のごときはやさである。
ある家の若者が詠んだ歌

ふねにのる 人の齢も追い風に
 いそげば申の おはりにぞつく

熱田の宿の主が出迎えて物語などし
ながら共に宿に向かい到着。
徳川義直公は大樹のごとき御慈非篤く、
世間の評判は言うまでもない。
御母堂は宗応院と号されていらっしゃる。
去る1614年の9月10日に亡くなられた。
ちょうど一周忌今日、法要を営まれるために
武蔵よりこの国にお帰りになって
物忌のお籠りになっていらっしゃると宿の主。
このことをお伝えして帰りますとのこと。

つねならぬ 世のならひこそ かなしけれ
 玉のうてなの 住いなれども

このように思いながら
宿に到着すると、時は丑の刻、真夜中になっていた。

東海道旅日記「下りの記」 関宿

2021-5-28 UP

関の里に到着した際には、供の者の歌として

風邪の咳と関の里のせき、

亀山の里と鼻をかめとをかけて、

風ふけば みなかち人はせきいでて

ゆくゆく鼻を 亀山のさと

と狂歌を詠んで笑い興じたとあり、

旅情をなぐさめています。

早朝に水口の宿から出発し、

約41キロ弱の道のりを進み、庄野の里に到着。

日の短い頃ですから、なるべく先を急ぐために

足早に進んでいます。

関宿には、参勤交代や伊勢参りの人々で

にぎわった町並みが残されていて、

当時の人々の暮らしが伺えます。

宗翔さん、zoom対談会のお知らせ

2021-5-20 UP

ご機嫌よろしゅうございます。

来週5月26日(水)19時より、以前ご紹介しました
宗翔さんのzoom対談会がいよいよ行われます。

京都妙心寺塔頭 退蔵院副住職
松山大耕師がインタビュアーを務める、
Zoom対談会に宗翔さんが登壇します。
対談では
予約の際に募集した質問の中から、
松山師が選びとってお話を進めていきます。
禅について、茶の湯について、
日頃聞いてみたいことをこの機会に是非質問してみてください。

詳細・御予約はこちら
www.myoshinji.or.jp/tokyo-zen-center/10

江月和尚の偈文

2021-5-7 UP

まだ日も昇らぬうちから宿を発ち、
鈴鹿山で休憩する遠州公一行。
この日の日記では、出発の際にいただいた
江月和尚の手紙を読み、
その心遣いに涙を流す遠州公の様子が記されています。
長い旅路へ向かう遠州公を気遣った江月和尚が送った偈文

莫忘風流旧同友 花時洛下約遭逢
(わするなかれふうりゅうきゅうどうゆう
 はなのときらっかにそうほうをやくす)
には、風流の心を一日としてわすれることなく、
今日まで生きながらえてきた私たちであるから、
また必ず桜の花が咲くような風流の時には、
また京都で逢うことができるでしょう。
お互いに元気でその時を楽しみにしています。
という意味が込められています。

この時江月和尚69歳、遠州公64歳。
当時60歳を超えることは大変な長寿であったので
生涯の友ともいえる二人の交友の深さが
この偈文からも偲ばれます。
遠州公も鈴鹿の神前で、また来年の桜の咲く頃、
お目にかかりたいと願います。
玉の緒(命)の少しでも長からんことを
祈るばかりです。と歌を贈ります。
残念ながら、遠州公が江戸に出府している
翌年の11月1日に70歳で入寂される江月和尚。
再び会うことは叶いませんでした。

温茶会のお知らせ

2021-4-29 UP

ご機嫌よろしゅうございます。
「遠州茶道宗家13世 不傳庵 小堀宗実家元によるオンライン茶会」
の最新映像が5月1日に配信されます。
新緑が輝き、露地の苔も青々と美しさを際立たせる皐月。
茶道では炉を閉じ、風炉の時季となります。
今回は「初風炉の薄茶」 をテーマに、
清々しい道具組でもてなしをいたします。
詳細はこちらから
www.enshuryu.com/online/onchakai004/

東海道旅日記 下りの記 十月九日訳文 

2021-4-24 UP

九日 鶏の鳴くより前に出発をし、
午前八時頃に、伊勢の国鈴鹿山の麓に到着。
しばらく休憩をとることにして、
都を発つときに洛北大徳寺の江月和尚から
いただいた餞別の一偈を開くと、
別れの情が改めて思い出される。
 
相坂の 関の名を鈴鹿山 
 けふふりはへて そでぞ時雨るる

と口すさびつつ手紙に目をやると
ご自身もお身体の調子が悪くていらっしゃるのに、
細やかに私の体調を気遣って、
この旅路を案じて記してくださっていた。
返歌ではないが一首歌を詠んだ。

例ならぬ 身さへ老さへ 別さへ 
 君と我とのものぞかなしき
 
流れる涙をおさえつつ、一偈をひらく。
その三、四句目に
莫忘風流旧同友 花時洛下約遭逢
(わするなかれふうりゅうきゅうどうゆう
 はなのときらっかにそうほうをやくす)
と、互いの長寿を祝してくださっている。
ちょうどありがたくも鈴鹿神社の御神前であったので

花の時 あはむとならば 鈴鹿山
 神にぞいのる ながき玉の緒

と返歌を詠んだ。このような戯れ言も、
思えば本当の祈りになるであろうよ。
この里を出て

八十瀬立 浪かけ衣 ほさじただ 
 君がわかれの わすれがたみに

と詠む。江月和尚にこれまでの事を早速文に
したためて送った。
次第に進んでいくと関の里に着いた。
ここを出るといって供のものが歌を詠んだ。

風ふけば みなかち人は せきいでて 
 ゆくゆくはなを かめ山のさと

笑いにて興じて、先を進み、庄野の里に到着。
一泊した。

学習院さくらアカデミー定期講座のお知らせ

2021-4-16 UP

ご機嫌よろしゅうございます。
東京・目白にあります学習院のさくらアカデミーでは、
オンラインで各種講座開講中です。
遠州流でも定期的講座が組まれています。
今回は「和歌、歌銘」についてです。
小堀遠州が茶の湯に取り込んだ和歌の世界についてお話しします。

詳細・お申し込みはこちらから。
g-sakura-academy.jp/course/detail/2021/A/051/

宗翔さん、zoom対談会のお知らせ

2021-4-10 UP

ご機嫌よろしゅうございます。
5月26日(水)19時より
京都妙心寺塔頭 退蔵院副住職
松山大耕師がインタビュアーを務めるZoom対談会に
宗翔さんが登壇します。
対談では予約の際に募集した質問の中から、
松山師が選びとってお話を進めていきます。
禅について、茶の湯について、日頃聞いてみたいことを
この機会に是非質問してみてください。

詳細・御予約はこちら
www.myoshinji.or.jp/tokyo-zen-center/10