初風炉(しょぶろ)

2014-5-1 UP

5月1日  初風炉(しょぶろ)

ご機嫌よろしゅうございます。

茶道ではいよいよ季節が夏へかわり 茶室の設えも、爽やかな季節に向けて 準備します。

寒い冬には、お客様に近い炉(ろ)を使って暖をとり 大きな釜で湯を沸かしました。 5月に入り暖かい季節になると、なるべく火の気をお客様から 遠ざけるため冬の間使用した炉に蓋をして 風炉を壁付きの方へ置きます。

この風炉の中にも小さな宇宙が広がります。  初夏・盛夏・晩秋にそれぞれ真・行・草と呼ばれる灰型に 形を変えて5月から10月に渡る季節の移り変わりを表現します。

「父は家元」の映画の中で 安藤執事長が灰型を作るシーンがありました。  丹精こめて手入れした灰は決して押さえずに、 その一粒一粒を  やはり自分で作った灰箒で丁寧になでて仕上げていきます。  灰が自分の思い通りに動かせるようになるまでには 長い年月を要します。

遠州流の灰は湿し灰(しめしばい)とよばれるもので 使うたびに湿らせて振るいにかけ、湿り具合を調整して保管しています。  ご宗家の灰は、遠州公の時代から繰り返し使われ、  手入れされてきた歴史ある灰で 振るう者にも、一粒とて無駄にせぬようにと 振るい方と共に教えられてきました。  直門のお稽古ではその遠州公以来の灰でお稽古しており  なんとも身が引き締まります。

遠州公の時代には26通りの型があったそうです。

袋藤(ふくろふじ)

2014-4-30 UP

4月30日 袋藤(ふくろふじ)

ご機嫌よろしゅうございます。
早いもので今日で4月も終わり、
明日から5月です。

今日は季節の茶花「袋藤」の
お話をさせていただきます。

袋藤とは、花の咲く直前の
袋に花が入った状態のことをさします。

26日に藤浪の茶入をご紹介しました。

藤は茶の湯では風炉の花とされますが、
二季草(ふたきぐさ)ともいわれるように、
旧暦では春から夏にかけて咲きます。
また、添えるものの少なくなる4月には
4月中も袋に入っているうちは使っていいと
されています。

床の間にこの袋藤が入ると
いよいよ季節が変わるのだなということを感じさせてくれます。

しかし、使用する日に合わせて
袋に収まりながらも花色がのぞく位の
ちょうどよい状態のものを手に入れるのはとても困難ですので
この袋藤を拝見できるのは
大変なご馳走といえます。

昭和の日

2014-4-29 UP

4月29日  昭和の日

ご機嫌よろしゅうございます。
今日は「昭和の日」
祝日です。

4月29日は、もともと昭和の時代「天皇誕生日」という祝日でした。
それが、昭和64年(1989)1月7日に
昭和天皇が崩御されたことを受けて年号が平成へ。
「天皇誕生日」は今の天皇陛下のお誕生日である12月23日となり、
4月29日は昭和天皇が自然を愛したことにちなんで、
平成元年から「みどりの日」と名称を変えて祝日として存続しました。

そのあと平成17年に国会で「国民の祝日に関する法律」
が改正され、平成19年より「昭和の日」とすることになったのです。

自然をこよなく愛された昭和天皇は、
「全国植樹祭」にも必ずご臨席になり、
ご自身の手で植樹をされてきました。

国営昭和記念公園は、昭和天皇御在位50年記念事業の一環として、
建設された広大な国営公園です。

また皇居東御苑は戦後、昭和天皇御自身の発案により
作られた庭園で、
徳川時代からの日本庭園と、開発によって失われていく
武蔵野の林を惜しんでそのまま移植された雑木林があります。

この日本庭園は江戸時代、遠州公が造り
三代将軍の徳川家光の命で改修されたと伝えられる庭園で
焼失などにより明治以降荒廃していたものを
皇居東御苑の公開の開始に当り、
九代将軍徳川家重の時代に作成された庭園の
絵図面を参考に造られたものです。

どちらも四季折々の美しい自然を目にすることができ、
自然を愛された昭和天皇が偲ばれます。

遅桜(おそざくら)

2014-4-28 UP

4月28日 遅桜(おそざくら)

ご機嫌よろしゅうございます。
東京では桜の見頃もいよいよ終わりを迎える頃かと思います。

今日は桜の名を銘に持つ
大名物「遅桜」についてご紹介致します。

以前にご紹介した初花の茶入はすでに
世上第一として広くその名を世にとどろかせていましたが、
その後に新たに見出されたのがこの茶入れでありました。

そこで

夏山の 青葉まじりのおそ桜
初花よりもめづらしきかな

という金葉集の歌に因んで
足利義政が銘をつけたとされています。

初花より景色の暗い釉薬で、華美でないところが
かえって品位の良さを感じます。

この茶入は徳川家の所蔵、柳営御物となり
後に三井家に伝わります。

過日、東京都目黒美術館で行われた御先代の
「紅心 小堀宗慶の世界」展にて
この遅桜と初花を隣り合わせとして展示されたことは
大変珍しいことで、後にも先にも
このときばかりかもしれません。

ご覧になれた方、大変な幸運でした。

道成寺鐘供養

2014-4-27 UP

4月27日  道成寺鐘供養

ご機嫌よろしゅうございます。

今日は4月27日です。
毎年4月27日には和歌山県川辺町の道成寺で
鐘供養が行われます。

道成寺は和歌山県最古の寺で、
大宝元年(701年)に創建されました。

この寺は『安珍清姫伝説』で知られており
能や歌舞伎・浄瑠璃などでも大変人気の高い演目です。

寺の創建から230年経った、延長6年(928年)。
参拝の途中、一夜の宿を求めた僧・安珍に清姫が
恋の炎を燃やし、裏切られたと知るや大蛇となって安珍を追い、
最後には道成寺の鐘の中に逃げた安珍を焼き殺すという
悲恋の物語です。

平安時代の「法華験記」(11世紀)、今昔物語などに同じような
お話をみつけることができ、
内容は伝承によってそれぞれ若干違いがあります。

藤波(ふじなみ)

2014-4-26 UP

4月  26日  遠州公の愛した茶入「藤波(ふじなみ)」

ご機嫌よろしゅうございます。
本日は遠州蔵帳所載の茶入「藤浪」
をご紹介します。

この茶入の釉薬のかかった景色が
藤の花の垂れ下がるようすに見られることから

新古今集 春歌の

かくてこそ みまくほしけれ 万代(よろずよ)を
かけて忍べる 藤波の花

の歌から命銘したといわれています。
箱の裏には遠州公がこの歌をしたためた小色紙が
貼り付けられています。

挽家(ひきや)とよばれる茶入の入れ物に施された意匠は、
紫檀(したん)に藤の花が咲く模様を全面に彫り、
沈金を施していて大変珍しいものです。

藤の花は二季草(ふたきぐさ)の名もあるように
春から夏へ、ふたつの季節にまたがって咲き
和歌でも古今集等、春・夏の部ともにその名が見られる花です。

前押せ

2014-4-25 UP

4月25日 前押(まえおせ)

ご機嫌よろしゅうございます。

今日は遠州公の好みの形である前押について
お話ししたいと思います。

茶碗や水指などの道具に見られる意匠です。
正面に手で押したわずかなへこみを作り
アクセントとしています。ここが正面ですよと
お客様にわかっていただけるように
との心配りからついています。

遠州流では濃茶の後、数名のお客様に次々と
薄茶を点てる場合に重ね茶碗というものを使用します。
同じ出生(窯)のもので、天目型の成りに
正面をわずかにへこませた前押の形
のものを大小重ねて使用する茶碗です。

遠州公は当初三島茶碗などの平茶碗をお客様の人数分重ねて
点法したようですが、
それを国焼きに改めて考案しました。

切形(きりがた)と呼ばれる型紙をもとに
遠州公の作為による前押茶碗を、八世宗中公が作らせた
高取の重ね茶碗も今に伝わっています。

この重茶碗というお点法は、
遠州流特有のお点法です。

12世宗慶宗匠命日

2014-4-24 UP

4月24日  十二世宗慶宗匠命日

ご機嫌よろしゅうございます。

今日は4月24日
先代 紅心 宗慶宗匠のご命日です。

昭和25年 音羽護国寺において
二代小堀正之 備中守大膳宗慶公の宗号
「宗慶」を襲名されました。

並々ならぬ才を持ちながら、父である遠州公の存在に
かくれてしまい注目されることが少なかったことや
十一代の宗明宗匠から一巡した新たな一代目と捉え
二代目の「宗慶」を名乗ることとなりました。

そして当代家元は三代宗実公の名を襲名。
小堀遠州から続く綺麗さびの血脈は、
今も確実に受け継がれ、そしてこれからも
繋がっていきます。

根津美術館で行われた米寿の茶会の折
ご先代の無事と長寿を願って
お家元が床にいけられた
袋藤と延齢草の花

そしてその床の間をお二人でご覧になる姿が
今でも鮮やかに胸に蘇ってきます。

春眠暁を覚えず

2014-4-23 UP

4月23日  春眠暁を覚えず

ご機嫌よろしゅうございます。
今日はこの漢詩をご紹介します。

春眠不覺曉 (春眠暁を覚えず)
處處聞啼鳥 (処処啼鳥を聞く)
夜来風雨聲 (夜来風雨の声)
花落知多少 (花落つること知んぬ多少ぞ)

孟浩然の春暁の詩です。

一般的には、次のような意味に解釈されています。

春の眠りは心地よく、うっかり寝過ごし、
夜明けに気付かない。
目覚めてみると、ところどころで
鳥がさえずっていて天気が良さそうだ。
そういえば、昨夜は風雨の吹き荒れる音がした。
せっかくの花がどれほど落ちたことか。

近年では
春は日の出が早いので、同じ時刻に起きても
すでに空は明るい。
という意味で解釈する説もあるようです。

ただ、春のうららかなあたたかさとのどかさを表すのは
やはりこれまでの解釈の方があっているのではかなと思います。

桜鯛

2014-4-22 UP

4月22日  桜鯛(さくらだい)

ご機嫌よろしゅうございます。
今日は、この時期旬を迎える「桜鯛」について
お話しします。

桜鯛は、春に旬を迎えるマダイのことを指します。
マダイは桜の花が咲き始める3~6月頃
産卵の為に浅瀬に来るので、この時期のマダイのことを
桜鯛と呼びます。
産卵期の鯛は赤みが増し、身が肥えて脂がのり、
一番美味しくなります。
他の季節のものと区別され珍重されています。

この時期、大阪の船場では親戚や親しい家の間で
とびきりの桜鯛を贈答する風習が、
江戸時代から大正頃まで続いていたそうです。

会席でも旬の食材を取り入れた献立が考えられ
その季節にあった旬の食材でお客様をもてなします。
これまでもいくつか「旬」の食材という
お話をしてきましたが
旬の時期においしくなるのは何故だかご存知でしょうか?

それは1年のサイクルの中で、
その生物が次の世代を産むために体に栄養を蓄える時期
と重なることが多いからなのだそうです。