東海道旅日記「下りの記」10月14日 訳文

2021-11-26 UP

十四日 

さやの中山にかかると
おもいがけず鹿の声が嵐と共に聞こえてくる。

  時雨つる 嵐の雪間 月さえて
     鹿のねこゆる さ夜の中山

此の山の景色を言い表そうにも言葉がたりない。
大井川にかかると、夜も明け始めた。
嶋田を経て、田中の城主は私が親しくしている方だったので、
手紙をしたためて送る。
岡戸の里を過ぎて、宇津の山にかかる。
 
  見ればみし 人ならねども ふみ分て 
   道はまよはぬ うつの山ごえ

さらに進んでいき、丸子の里に到着した。
ここで宿をとる。