23日天晴
神奈河を立、帷里(かたびらのさと)
藤沢を過て 船渡を経て 大磯にかかる
そこをゆき過ぎて磯辺を通る 風静に
浪の音をだやか也 ひとに問へば爰(ここ)なむ
こゆるぎのいそといふをききて
名所に寄する別といふ心を
こゆるぎの いそがぬ旅も すぎて行
別路とめよ あしがらのせき
なをゆきゆきて夕方 山の端にかかると
きく河のさとを過 さ河を渡りて 小田原に着 一宿
思の外友の入来て ひとりふたりして語て其夜も更けぬ
鶏鳴を聴くより雨振出 風烈(はげしく) 浪の音高
忍ぶ別れ旅宿枕といふこころを
よるなみの 聲にめざます かり枕
忍ぶ別の 夢ぞみじかき