茶の湯日記

不傳庵 茶の湯日記 

夜明け前

遠州茶道宗家十三世家元 小堀 宗実 


 令和二庚子歳の春を、皆様めでたくお迎えの事とお慶びするとともに、本年一年間のご健勝とご多幸を祈念申し上げる。

 さて、昨年5月の天皇陛下の御即位により改元となり、令和として初めて迎えた正月はいかようであっただろうか。三ヶ日は大変おだやかな天候であり、静かな新年のスタートとなったように思われる。スポーツの世界では、ラグビーや駅伝などが早々に私たちの胸を躍らせてくれていた。

 宗家では、12月20日を過ぎるころから、正月を迎える準備が始まる。先〔ま〕ず畳替えである。畳職人の方々が5、6人で、5日間ほどで仕上げていく。最近は畳職人も高齢化・後継者不足で、この先が、どのようになっていくか大変心配である。同じ伝統や技術の継承でも、表舞台で活躍する立場でなく下支えになる彼らのような職業の人たちに、政府や行政者はもっと目を向けてほしいと思う。5日目に完成した時点で、責任者と私で点検を行う。このときに不具合があると、もう一度やり直しという事になる。これは、双方で確認し納得のうえでの話で、昨年は珍しくやり直しが数畳あった。そうなると完了が夕刻5時位までのはずが八時位までになってしまう。彼らも誇りあるプロである。したがって予定時間を過ぎても最後まで仕事を貫徹していった。

 同時期に、植木屋さんも松葉敷や、生垣の青竹替えなどに来る。宗家の人達はもちろん大掃除である。遠州公をはじめ、歴代をお祀りしてある祖堂は、私と長男の正大で行う。29日には、私と娘二人、息子とで花屋を訪れ、結び柳を始めとする正月飾りの買い物をする。自庭の椿もあるが、予備のため曙椿も求める。最近は正大にどれがよいかを決めさせる事もある。30日には鏡餅を大きいものから小さいものまで、各床の間、水屋棚などに飾り、一般の門松に代わる宗家独特の門柱飾りをする。家内や娘達、女性陣はお節料理の仕込みに入っている。錦玉子、栗金団〔きんとん〕の甘味や数の子の塩加減、お雑煮の出汁具合をこの日で決定する。そして大晦日。朝から家内達は、やはりお節料理等の最終調整。私は除夜釜の準備に入り、昼間に年越し蕎麦をいただいて、午後からはお客様の到来を待つ。菓子は自家製の蕎麦がきである。この数年はこれも正大の役割となっている。昨年は二通りを試していたらしい。このあたりはもう任せている。

 除夜釜が終わると、正月の床飾りの準備をする。その後、新年零時になり、先祖にお茶を供え、読経を終えると茶室に移動し新年初の大福茶となる。このときは91才の母や、浅井家の男子も相伴する。私が点前をして皆に一服ずつ振舞ったあと、それぞれは翌朝まで就寝。私と正大でその後に埋火を行い、後片付けをしてから翌朝まで仮眠をとる。朝7時過ぎに炉中を改めて初炭をし、元旦のお節をへて再び家族全員で初釜のお茶を頂く。

 これは、いつの時代も宗家において引き継がれた行事であり、令和の時代も不変のものなのである。