茶の湯日記12月

不傳庵 茶の湯日記 

しめくくり
遠州茶道宗家十三世家元 小堀 宗実 

 さていよいよ本年も最後のひと月となってしまった。年々歳々、一年の経過が速く感じるのは、世の中のならいでもあるが、特に今年は私にとっては、今迄で一番といってよい程、時の流れが厳しかった。

 八月以降の後半の六ヶ月は、シンガポール・フランス・ドイツ訪問という海外行事が入ったせいもあり、通常のスケジュールを残りの日数でこなす為、濃密とならざるを得ないこととなり、一日の中でも、二ヶ所、三ヶ所での行事が盛りだくさんということも少なくなかった。

 しかしながら、そういった行事や出張の合い間をぬって、茶の湯者本来の茶事を催すことも怠らなかったのは、自分なりに満足している。二月・三月・四月と出だしは毎月三、四回コンスタントに行なっていたが、五月以降、他の予定に押し切られるような形で、茶事の催しを諦らめてしまった。そうすると、何か箍が外れるように、六月・七月も茶事はできず、それを九月まで引きずってしまった。もちろん、時間的にもぎりぎりではあるが、その前に自分に負けてしまったように思っていたのであった。

 そこでもう一度、気合を入れ直して、十月・十一月と再び茶事を数日間行なった。茶事は、私一人で行なえるものではなく、家族や宗家全員の協力体制が無いとできない。更に言えば、宗家で行なっている茶事は、他の追随を許さないものでなければならないと思っている。もちろん、これは他と比較することではないのは承知のことではある。そういう気概を持って、私ほか、たずさわる人間の全てがそう思っているということである。とにかく最高のおもてなしを以ってお客様をお迎えするというのが、遠州公以来の私達の考え方であると言っていい。

 その志を決して忘れることのないように肝に銘じてお茶に取り組みたいと思っている。手伝ってくれる人達も、そういう私の気持ちを自分の気持ちにして茶事に臨んでいることはその姿を見ているとよくわかるものである。自画自賛と言われるかもしれないが、本当にそう感じ、感謝している。今、このような気持ちで、私が茶事に取り組めるのも、先代紅心宗匠が、華甲(六十歳)の年に、私を副家元に任じ、一年間茶事を催し、身をもって茶の湯の何たるかを教導してくれたおかげである。

 来年私も干支の上では、その先代と同じ華甲を迎えることになる。時代の違いはあっても、志は不変である。私は、今まで父を始め多くの人たちに自分がいただいたものを、きっちりと受けとめ、感謝の気持ちをもって、来たるべき新年を迎えたいと考えている。