茶の湯日記11月

不傳庵 茶の湯日記 

最高の一日に感謝!

遠州茶道宗家十三世家元 小堀 宗実 


 ようやく秋めいてきたと思っているうちに、暦の上では初冬を迎えることとなった。毎回のように書いているが、ここ数年来の天候の様相は、私たちの想像を超えて激しいものがある。台風を例に挙げても、大型であったり、長期型であったりとさまざまである。
それでも自然は、確実に私たちの生活に、春夏秋冬のうつろいを感じさせてくれる。ときに厳しく、ときにやさしく、日本人はそこにもっと敬意をもって接していくべきであろう。

 さて去る9月17日は、私の満60歳の誕生日ということで、ご承知のとおり、日中は音羽護国寺において、東京直門をはじめ、私が出張稽古にうかがい直接に指導している奈良、福岡、名古屋、大阪、金沢の門人の方々が、華甲祝賀茶会を催してくれた。五席いずれも、創意や工夫そして何よりも祝意の気分にあふれた素晴らしい取り合わせであった。

参会のお客様には他流派の方々も数多くいらっしゃっており、その道具組みの凄さには大満足の様子で、世間で名物道具を扱う茶会はいろいろあるけれども、それよりも見事といわれ、私もたいへん嬉しく鼻高々であった。 

それは、やはり遠州好みという美意識や綺麗さびという感性が、品がよく、調和がとれているということであると思う。そして、何よりも各席でお点前があり、それもそれぞれみな、異なった雰囲気であったことも多様性があり、もち味があり、それが個性となっていた。正しく平成を代表する大茶会であったといえよう。

 また夕刻には、東京支部主催による華甲祝賀会に招かれた。パレスホテルの宴会場には、600人以上のお客さまとなり、昼夜合わせて、延べ1000人以上の人達にお祝いいただいたことになり、あらためて恐縮の次第である。パーティーでは、事前に知らされていないこともたくさんあり、まさに感動の連続であった。

私は常々、茶会のおもてなしで大切なポイントが2つあると申し上げている。それは、お客さまにお喜びいただくためには、定番からくる安心感と、驚きからくる感動が必要だということである。お客さまは、自分がよく知っているものに出会うことで心が平らになり、また周囲との共有の感覚を味わうことになる。一方で、まったく知らないことや、びっくりすることで、いままで味わったことのない感動を覚えるものである。このバランスが大切で、その主催する行事によっては、五分五分のときもあり、六:四のこともあり、八:二のこともあるのである。これを仕切るのが亭主ということになろうか。

そういった意味合いにおいてこの夜の祝賀会は、サプライズの感動にあふれた趣向であった。本当に私は幸せな一日を多くの方々の思いによって頂戴できたことに、あらためて感謝申し上げたい。祝宴の後、帰途につくころには、中秋の名月が夜空に輝いていて、もう一度、この一日の喜びにひたったのであった。
この一日の喜びにひたることができた。