茶の湯日記7月

不傳庵 茶の湯日記 

道具の見方

遠州茶道宗家十三世家元 小堀 宗実 



 過日アメリカのNASAの発表によると、今年は観測史上最も暑い夏になるようである。もうすでに5月の中旬から30度を超え、全国各地において真夏日が最速で到来といったニュースが報道されている。高齢化の進んでいる日本では、熱中症の心配も深刻化している。高齢者の方々は、クーラーを使用することも比較的遠慮がちであり、また水を飲むことも避ける人が多い。夜、熟睡したいとの思いからそういったことになりやすいが、さまざまな状況が変化している現代では、たっぷりと水分を摂取することをお薦めする。

 さて去る5月に京都こほう孤蓬庵において行なわれた遠州忌茶会は、五月晴れの好天に恵まれ、新緑の薫風さわやかな一日となった。濃茶、薄茶ともに、流祖ゆかりの道具組みで、きれいさびのレベルの高い茶会であった。

 この日、私には久しぶりの出逢いを楽しみにしていたものがあった。それは薄茶、忘筌席で使用された水指のことである。半月形をした高取の水指である。高取焼は御承知の通り、遠州流とは格別に縁の深い焼きものである。流祖遠州公に、筑前黒田家の長政、忠之公より陶工、高取八山に対しての指導の依頼があったことは有名である。

当初は、千個の茶入からたった一つのみを取り上げ、他のものは壊したといった厳しい指導の逸話も残っているが、その後は、遠州指導国焼の代表的存在となるまでに至った。その時代のものを遠州高取と称して、とくに珍重している。しかし、いま伝世の古い高取は数多いが、真に遠州高取といえるものは、それほどたくさんあるものではない。

このたび忘筌に登場した水指は正しく遠州高取と称する優品である。同手半月型の水指では、畠山記念館に収蔵されているものが古来より名高いものである。正面前押に白釉が美しくかけられ景色となっている。一方このたびのほうは、白釉ではなく、褐色の釉が全体にかかり、正面にはやや茶味を帯びた黄釉がかかっている。この黄釉は高取茶碗で高名な銘「面」にもつかわれているものだ。全体は遠州好の特長である櫛目が全体に細かくほどこされている。色調のこともあり、かなり地味である。実は私はこの水指を二十年以上前に見たことがあった。そのときは、やはり白釉の美しいもう一方に心惹かれた。ところが数十年の時を経て、今度はこの地味なほうに魅力を感じたのであった。なぜだろうかと自問しながら、遠州公の飛鳥川茶入の歌と逸話を思い出した。

  昨日といひ今日と暮して飛鳥川
  流れてはやき月日なりけり(春道列樹:はるみちのつらき)

やはり、ものの見方も時とともに感ずることが、変化しているのだと思った次第である。

 やはり、ものの見方も時とともに感ずることが、変化しているのだと思った次第である。